アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

2021-06-05から1日間の記事一覧

再読 横溝正史(56)横溝の金田一耕助ファンあるある

(1)法事で帰省の際、「犬神家の一族」のスケキヨの白マスクをかぶって帰って、親戚から「もう帰ってくるな!」と叱られる。 (2)夜中に「八つ墓村」の頭に懐中電灯を指し模造刀を持ったコスプレをして、ご近所さん宅に醤油を借りに行って気味悪がられる。 (3)…

再読 横溝正史(55)「空蝉処女」

横溝正史「空蝉処女(うつせみおとめ)」(1946年)は、もともと1946年の敗戦直後に横溝が完成させ関係者に送付し後は掲載を待つばかりの短編となっていたが、なぜか雑誌掲載されず未発表のまま長い間放置されていたものを、原稿の保管者から提供されて横溝…

再読 横溝正史(54)「首」

多作の量産作家の作品を何作も連続して読んでいると、状況設定や人物類型やラストの結末の付け方まで、いつの間にか似通り重複していて正直、ツライ時がある。以前に私は松本清張の社会派推理をよく読んでいたけれど、どうしても事件背景や犯行動機や殺人ト…

再読 横溝正史(53)「金田一耕助の冒険」

横溝正史「金田一耕助の冒険」(1976年)は、私立探偵の金田一耕助と警視庁の等々力警部のコンビが活躍する探偵譚である。本作は全11編の短編からなり、一つの短編の長さはどれも40ページほど、タイトルは「××の中の女」で全て統一されている。本作は「女シ…

再読 横溝正史(52)「ペルシャ猫を抱く女」

昔の角川書店は「横溝正史全集」の完全版を期して、横溝が過去に執筆した作品は、ほぼ漏(も)れなく文庫にして出していた。そこで横溝の短編群を所収した短編集も数冊、編(あ)んでいた。横溝のデビュー作を含む大正期の横溝短編集「恐ろしき四月馬鹿」(1…

再読 横溝正史(51)「刺青された男」

昔の角川書店は「横溝正史全集」の完全版を期して、横溝が過去に執筆した作品は、ほぼ漏(も)れなく文庫にして出していた。そこで横溝の短編群を所収した短編集も数冊、編(あ)んでいた。横溝のデビュー作を含む大正期の横溝短編集「恐ろしき四月馬鹿」(1…

再読 横溝正史(50)「山名耕作の不思議な生活」

昔の角川書店は「横溝正史全集」の完全版を期して、横溝が過去に執筆した作品は傍流なマイナー作、あからさまな破綻作・失敗作、他人名義で発表した代筆など、どんなものでも漏(も)れなく片っ端から文庫にして出していたので、横溝のデビュー作らその周辺…

再読 横溝正史(49)「恐ろしき四月馬鹿」

昔の角川書店は「横溝正史全集」の完全版を期して、横溝が過去に執筆した作品は傍流なマイナー作、あからさまな破綻作・失敗作、他人名義で発表した代筆など、どんなものでも漏(も)れなく片っ端から文庫にして出していたので、横溝のデビュー作らその周辺…

再読 横溝正史(48)「鴉(からす)」

横溝正史の探偵小説を続けて読んでいると、「この時期の横溝さんは、こういうプロットやトリックが好きでハマって、かなり入れ込んで自作に連投しているな」と分かってしまうことがある。「鴉(からす)」(1951年)を執筆時の横溝正史は、「ある人物が失踪…

再読 横溝正史(47)「壺中美人」

昔の角川文庫の横溝作品の表紙カバー絵は、もれなく杉本一文が描いていた。杉本は毎回カバー絵作成の際に事前に横溝の本編小説を読んで、それからイラストを描いていたに違いない。だから杉本一文の歴代イラストカバーをよくよく見ていると、明らかに本編の…

再読 横溝正史(46)「霧の山荘」

横溝正史「霧の山荘」(1958年)のおおよその話の筋はこうだ。あらかじめ補足しておくと、「K高原のPホテル」は「軽井沢高原のプリンスホテル」の匿名表記といわれている。「昭和33年9月、K高原のPホテルに滞在していた金田一耕助を江馬容子という女が訪ねて…

再読 横溝正史(45)「女怪」

戦後に私立探偵の金田一耕助を創作し「本陣殺人事件」(1946年)にて初登場させた横溝正史は、最初から金田一の活躍を時系列で厳密に構成するシリーズ化の金田一探偵の物語世界構築を案外、丁寧に力を入れてやっている。例えば「黒猫亭事件」(1947年)は「…

再読 横溝正史(44)「幽霊座」

以前に横溝正史の探偵小説を連日、連続してほぼ全作読んでいたとき、例えば「本陣殺人事件」(1946年)や「獄門島」(1948年)ら、有名どころの金田一耕助探偵譚を読み切ってしまった後に「残りの横溝マイナー作に読むべきものは、ほとんど残っていないので…

再読 横溝正史(43)「トランプ台上の首」

横溝正史「トランプ台上の首」(1959年)の話の、あらましはこうだ。「舟で隅田川沿いに水上惣菜屋を営んでいる宇野宇之助が、アパート聚楽荘(じゅらくそう)の1階に住むストリッパー、牧野アケミの生首を彼女の部屋で発見した。残されていたのは首だけで…

再読 横溝正史(42)「探偵小説」

横溝正史の短編「探偵小説」(1946年)は、そのまま「探偵小説」という何となく締(し)まらない捻(ひね)りのない凡タイトルではあるが、この平凡タイトルは本作の語られ方の叙述設定に由来している。ある東北地方の温泉地へスキーシーズンに探偵小説家の…

再読 横溝正史(41)「七つの仮面」

横溝正史「七つの仮面」(1956年)は、同じく横溝の「三つ首塔」(1955年)と読み味が似ている。いずれも女性の扇情的な性癖に絡(から)めたメロドラマ調の作りだ。それに殺人事件の探偵推理の要素が加わる。両作品ともに私立探偵の金田一耕助が登場する。…

再読 横溝正史(40)「車井戸はなぜ軋る」

横溝正史「車井戸はなぜ軋(きし)る」(1949年)の大まかな話はこうだ。 「ある日、探偵小説家である私S・Y(言わずと知れた横溝正史の匿名イニシャル表記)は、友人の私立探偵・金田一耕助から、ある事件に関する手紙一束と新聞記事の切り抜きと故人の手記…

再読 横溝正史(39)「迷路の花嫁」

横溝正史「迷路の花嫁」(1955年)は、金田一耕助が登場する長編推理ではあるものの全編に渡って金田一耕助は出てこない。金田一は話の幕間にたまに顔を出すのみである。その代わりに事件解決には、第一の殺人発見に「偶然に」居合わせた駆け出しの小説家の…

再読 横溝正史(38)「悪霊島」

横溝正史「悪霊島」(1980年)は、横溝作品が次々に映像化され過去の小説も売れまくる「昭和の横溝ブーム」の最中、一度休筆していた横溝正史が復活を果たし、齢(よわい)70代にして新たに書き抜いた上下二巻、全700ページ近くの長編である。横溝は本作を角…

再読 横溝正史(37)「死仮面」

いわゆる「昭和の横溝ブーム」にあって横溝作品が次々と映像化され社会での人気を極める中で、横溝ブームを強力に牽引(けんいん)したのは、角川春樹が社長だった昔の角川書店であった。当時から角川文庫が横溝作品をほとんど全作、漏(も)れなく完璧に出…

再読 横溝正史(36)「人面瘡」

「人面瘡」とは、以下のようなものだと言われている。「人面瘡(じんめんそう)は、妖怪・奇病の一種である。体の一部などに付いた傷が化膿し人の顔のようなものができ、話をしたり物を食べたりするとされる架空の病気。薬あるいは毒を食べさせると療治する…

再読 横溝正史(35)「貸しボート十三号」

横溝正史「貸しボート十三号」(1957年)は、基本は陰惨・猟奇な殺人事件なのだけれど、なぜか読後にはさわやかな(?)読み味の余韻が残る不思議な探偵小説である。本作は名門大学ボート部を舞台にした金田一耕助が活躍する探偵推理であり、「学園もののカレ…

再読 横溝正史(34)「悪魔の降誕祭」

横溝正史の探偵小説には「悪魔」の冠(かんむり)がつく作品が多い。例えば「悪魔が来りて笛を吹く」(1953年)や「悪魔の手毬唄」(1959年)や「悪魔の設計図」(1938年)や「悪魔の家」(1938年)といった具合だ。そして本作「悪魔の降誕祭」(1958年)で…

再読 横溝正史(33)「三つ首塔」

横溝正史「三つ首塔」(1955年)は「横溝の暗黒時代」と目される1960年代間近の連載長編であり、しかも本格の探偵推理雑誌「宝石」に掲載の作品ではないため(戦後の横溝は「宝石」に連載のものは力を入れた本格推理をしっかり書くが、「宝石」以外の一般誌…

再読 横溝正史(32)「殺人鬼」

横溝正史「殺人鬼」(1948年)は金田一耕助が登場する金田一シリーズの初期短編であり、「殺人鬼」という大してひねりのない凡庸タイトルに不思議と符合するかのように「いかにもな探偵小説の基本の型。探偵小説とは、このように書くものだ」の見本の典型話…

再読 横溝正史(31)「仮面舞踏会」

横溝正史「仮面舞踏会」(1974年)は何度か読んでいる。既読で犯人は知っているが、それでも読み返して面白い。本作の肝(きも)は、「犯人の意外性」と「犯人露見の決定的証拠」である。前者の「意外性」はヴァン・ダインの小説のようでもあり、後者の「決…

再読 横溝正史(30)「病院坂の首縊りの家」

横溝正史「病院坂の首縊(くびくく)りの家」(1978年)は「金田一耕助・最後の事件」のコピーが付いて、最初に迷宮入り事件を置き二十年後にそれが解決をみる上下二巻の壮大な長編である。ゆえに本作品は全二部構成で長い。読むのに骨が折れる。そういえば…

再読 横溝正史(29)「探偵小説五十年」

横溝正史のエッセイ集は生前、没後に渡って数冊出ている。「探偵小説五十年」(1972年)や「探偵小説昔話」(1975年)の、最初の方のエッセイ集はそれなりに意義ある話もあって読んで面白いが、自身の遍歴や日常雑感を連続して書いていくと中途で息切れし主…

再読 横溝正史(28)「髑髏検校」

よく知られているとおり、横溝正史「髑髏検校(どくろけんぎょう)」(1939年)はブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(1897年)の翻案小説だ。以前に都筑道夫との対談で、執筆時にベラ・ルゴシの映画「ドラキュラ」(1931年)はご覧になっていたのです…

再読 横溝正史(27)「悪魔の手毬唄」

横溝正史「悪魔の手毬唄」(1959年)の概要は以下だ。「岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村(おにこべむら)。たまたまここを訪れた金田一耕助は、村に昔から伝わる手毬唄の歌詞どおりに、死体が異様な構図をとらされた殺人事件に遭遇した。現場に…