アメジローのつれづれ(最新)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

読書のたのしみ

江戸川乱歩 礼賛(14)「化人幻戯」

「化人幻戯(けにんげんぎ)」(1955年)は、江戸川乱歩が六十歳の還暦記念パーティー席上にて「還暦を機に若返って新作を書きます」と明かしたもので、江戸川乱歩ひさびさの本格長編である。しかも、初出連載は推理ミステリー雑誌「宝石」ということで往年…

江戸川乱歩 礼賛(13)中井英夫「乱歩変幻」

江戸川乱歩研究や探偵小説評論、乱歩作品に関する書評は昔から多くあるが、なかでも私にとって印象深い乱歩についての文章は、創元推理文庫「日本探偵小説全集2・江戸川乱歩集」(1984年)巻末に書き下し解説として付された中井英夫「乱歩変幻」だ。 探偵小…

江戸川乱歩 礼賛(12)「屋根裏の散歩者」

江戸川乱歩の短編と長編を含めた全時代(オールタイム)ベストを選ぶとすれば、おそらく世人の一致するところで初期短編の「屋根裏の散歩者」(1925年)は必ず上位に位置するに違いない。少なくとも私の場合、乱歩のオールタイムベストとして「屋根裏の散歩…

江戸川乱歩 礼賛(11)「D坂の殺人事件」

江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」(1925年)が昔から好きだ。本作は本格の短編であり、「日本の開放的な家屋では密室事件は成立しない」という従来の声に対抗して乱歩が書いた日本家屋を舞台にした密室殺人である。密室の他にも格子越しに二様に見える浴衣柄の…

江戸川乱歩 礼賛(10)「何者」

江戸川乱歩の全短編の中で私は「何者」(1929年)という本格の作品が特に好きだ。「何者」は、乱歩の全作品の中で個人的ベスト3以内に入るほどの出来栄えであり、本当に素晴らしい隙(すき)のない清々(すがすが)しい本格推理だと思う。 (以下、犯人の正…

江戸川乱歩 礼賛(9)光文社文庫「江戸川乱歩全集」

江戸川乱歩に関し、皆さんは小学生の頃にポプラ社の「少年探偵団」シリーズでジュヴナイル(少年少女向け読み物)の乱歩に親しみ、それからしばらく空白があり、大人になって再び江戸川乱歩を読み返して再評価する「乱歩返り」(?)のパターンが、おそらく多…

江戸川乱歩 礼賛(8)「湖畔亭事件」

江戸川乱歩「湖畔亭事件」(1926年)の概要は、およそ次の通りだ。 「湖畔の宿で無聊(ぶりょう)にかこつ私は、浴室に覗き眼鏡を仕掛け陰鬱(いんうつ)な楽しみに耽っていた。或る日レンズ越しに目撃したのは、ギラリと光る短刀、甲に黒筋のある手、背中か…

江戸川乱歩 礼賛(7)「盲獣」

江戸川乱歩「盲獣」(1932年)に関して、私は昔から「非常にもったいない、惜(お)しい、残念だ」という思いが拭(ぬぐ)えない。乱歩の「盲獣」は「エロ・グロ・ナンセンス」の猟奇のその手の作品として、かなりの着想アイデアと筋書きで申し分がない。た…

江戸川乱歩 礼賛(6)「陰獣」

江戸川乱歩は、昭和の始めに明智小五郎の長編物「一寸法師」(1927年)を「朝日新聞」に連載して、あまりの出来の悪さに自己嫌悪に陥り「一寸法師」連載終了後に失意の放浪の旅に出て、しばらく休筆で筆を折る。江戸川乱歩という人は探偵小説家として案外い…

特集ドイル(6)「シャーロック・ホームズ 最後の挨拶」

小説をテレビドラマなり映画なりに映像化すると、だいたい原作イメージから大いに外れ、いつも失望すること多いが、「シャーロック・ホームズ」のドラマ化に関しては例外だったと思う。イギリスのグラナダTV制作、ジェレミー・ブレッド主演の「シャーロック…

江戸川乱歩 礼賛(5)「目羅博士の不思議な犯罪」

江戸川乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」(1931年)は題名が素晴らしい。タイトルだけで言えば、乱歩の作品では「ぺてん師と空気男」(1959年)と双璧をなす名タイトルであるように思う。 乱歩作品の中で、相当に秀逸と思える印象深い名タイトル「目羅博士の…

特集ドイル(5)「シャーロック・ホームズの叡智」

コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を読むなら新潮文庫の延原謙の訳が最良だ。昔から定番であるし。しかし、他社文庫からもホームズ翻訳は出ていて、しかも近年ちくま書房が相当な本気を出して本格なホームズ全集を文庫で出した際には、本編小説以…

江戸川乱歩 礼賛(4)「蜘蛛男」

人間は「無知であるがゆえに幸福」ということがある。江戸川乱歩の「蜘蛛男」(1930年)を私は10代の時に初めて読んだが、初読時その結末に驚いた。今でも探偵小説全般に無知だが、当時はさらに探偵小説のことをほとんど知らなかったので「まさか!こんな展…

特集ドイル(4)「シャーロック・ホームズの事件簿」

コナン・ドイルによる「シャーロック・ホームズ」は英米の海外だと普通に大人が楽しんで愛読する書籍であるが、どうも日本ではホームズはジュヴナイル(少年・少女向けの児童読み物)の感が昔から拭えない。小中学生の頃には児童物に翻訳されたホームズを皆…

江戸川乱歩 礼賛(3)「心理試験」

江戸川乱歩「心理試験」(1925年)は初期の短編であり、私が好きな乱歩作品だ。主人公が「心理試験」の裏をかこうとして、逆に自身の無意識の心理によって墓穴を掘る話である。 読み所は、悪知恵で工夫を凝らす主人公が自ら無意識のうちに墓穴を掘り最終的に…

特集ドイル(3)「シャーロック・ホームズの帰還」

戦後の探偵小説評論にて中島河太郎の功績は外せないと思うが、戦前にも優れた探偵小説の本格評論を書く人はいた。井上良夫である。井上はコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」について、ホームズ短編群を読み返した後、次のように書いている。「読み…

江戸川乱歩 礼賛(2)「人間椅子」

江戸川乱歩の小説は探偵推理が土台で、それに大正デモクラシーの「モダニズム・テイスト」か、昭和初期の「エロ・グロ・ナンセンス」の表層の味が加わるように思う。私は後者の猟奇で恍惚な「エロ・グロ・ナンセンス」よりも、前者の明るくて馬鹿っぽい「モ…

特集ドイル(2)「シャーロック・ホームズの思い出」

コナン・ドイルによるホームズ短編連作集の第二弾は「シャーロック・ホームズの思い出」(1894年)で、すでにこの頃は早くもドイルはホームズの推理連載を辞めて心霊物や冒険譚を書きたかったので、「最後の事件」にてライヘンバッハの滝壺にホームズを落と…

江戸川乱歩 礼賛(1)「孤島の鬼」

江戸川乱歩の素晴らしさを誉(ほ)め称(たた)える、時には乱歩の駄目な所にも半畳を入れて無理に誉める、今回から始まる新シリーズ「江戸川乱歩・礼賛(らいさん)」である。 「乱歩の前に乱歩なし、乱歩の後に乱歩なし」。江戸川乱歩である。日本の探偵小…

特集ドイル(1)「シャーロック・ホームズの冒険」

コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」は探偵小説の短編連作シリーズものの創始の草分けで基本である。昔から何度も繰り返し読み返しているが、最近これまた読み返してみたので、いつも読んでいる新潮文庫、延原謙訳の定番本にのっとって話を。まずは…

大学受験参考書を読む(67)秋山仁「数学講義の実況中継」

私が高校生だった1980年代に当時、駿台予備学校の数学科に在籍していた秋山仁の数学の大学受験参考書が流行ったことがあった。その時の秋山仁の数学参考書といえば、例えば駿台文庫「発見的教授法による数学シリーズ」全7巻(1989─95年。森北出版から2014年…

大学受験参考書を読む(66)板倉由正「エスカレーター式 日本史総合テスト7週間」

最近どうやら絶版の大学受験参考書が人気であるらしい。昔に定価で書店に並んでいた大学受験参考書が現在では絶版品切れの入手困難なために一時的に人気沸騰し、かなりの高額で取り引きされているというのだ。例えば、前に有坂誠人「例の方法」(1987年)と…

大学受験参考書を読む(65)横田伸敬「横田の交響曲(シンフォニー)日本史」

横田伸敬「横田の交響曲(シンフォニー)日本史」(1989年)は、大和書房の「受験面白参考書」(略して「オモ参」というらしい)の大学受験参考書シリーズの中の一冊である。何よりもタイトルの「交響曲(シンフォニー)日本史」にて、「交響曲」の「シンフ…

大学受験参考書を読む(64)宮尾瑛祥「宮尾のアッと驚く英語長文読解ルール」

宮尾瑛祥(みやお・えいしょう)「宮尾のアッと驚く英語長文読解ルール」(1988年)は、パラグラフリーディングないしはディスコースマーカーを指標とする英語長文の読み方を教授する大学受験参考書だ。ここでいう「パラグラフリーディング」とは、各段落ご…

大学受験参考書を読む(63)宮崎尊「東大英語総講義」

近年では東進ハイスクールに出講し、「東大英語」など難関大学対策の上級者レベルの英語を主に担当している宮崎尊について、この方は私が高校生だった1980年代から有名予備校講師としてご活躍で、氏のことは昔から知っていた。当時は「スイスイ頭に入る英単…

大学受験参考書を読む(62)本正弘「英語長文講義の実況中継」

「英語長文講義の実況中継」(1990年)らの著作がある元代々木ゼミナールの英語講師である本正弘その人について、私は実際に氏の講義を受けたり、お会いしたことはないが、英語の大学受験参考書を介して氏のことはそれとなく知ってはいた。ここで詳しくは述…

大学受験参考書を読む(61)「ザ・予備校」

1980年代に高校生で90年代に大学進学した私らの世代、つまりは1970年代生まれは、いわゆる「団塊ジュニア」の第二次ベビーブーム世代にあたり、そのため大学進学を希望する高校生も多くいて大学受験指導の予備校業界が最盛期の絶好調で、世相も昭和から平成…

大学受験参考書を読む(60)土屋博映「土屋の古文講義」

不思議なことに学校や職場でこういう人はだいたい一人か二人はいるものだが、なぜか自分のクラスや部署とは異なる生徒や同僚とも、いつの間にか顔見知りで親しくなっていて、登校時や出勤時に何気に遠くから観察していると、正門をくぐって玄関入口から廊下…

大学受験参考書を読む(59)牧野剛「予備校にあう」

私はたまに読んでいるのだが、「絶版」の大学受験参考書を収集して「博物館」形式で紹介するブログがある(「浪人大学付属参考書博物館」)。そのブログ主の「館長」と称する方は、絶版の大学受験参考書のことはもちろん、予備校業界や実際の入試過去問につ…

大学受験参考書を読む(58)前田秀幸「前田の図解日本史」

昔、代々木ゼミナールに出講していた日本史講師の前田秀幸の大学受験参考書はどれもよい。この人が執筆の日本史参考書にはハズレがない。だいたい前田秀幸の日本史参考書は何を読んでも面白い。例えば「前田の図解日本史」(1993年)でも「早稲田への日本史…