アメジローのつれづれ(最新)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

モッズな生活(1)モッズとは何か

今回から始まる新たな特集「モッズな生活」、まずはモッズの定義から。すなわち「モッズとは何か」。

私は、どうしても概念定義の初歩の形式の型から入りたくなる。そういえば昔に植草甚一が「ヒップとは何か、スクエアとは何か」の厳密な定義を、いちいち律儀に説明するようなエッセイを書いていた。もちろん、異論や反論はあると思うが、「モッズとは何か」と聞かれたら、私なりにない知恵と知識を絞って以下のように答える。

「モッズとはモダンの略である。生活様式や行動全般がモダンで洗練されていること。クールで粋(いき)で知的であること。音楽もファッションも交遊も全て均質で、そこそこスマートでなくてはいけない。その辺りの均衡のとれたバランスのよさがモッズのモッズたる所以(ゆえん)、つまりは、そういう人達が『モッズ』」。

「いや、モッズって1950年代末から60年代半ばにかけてイギリスで起きた若者文化の現象一般でしょ」と厳密な世代論のカルチャー定義で言われたら、「そう、1950年代末から60年代半ばのイギリスの若者文化はモダンで洗練されてて知的でクールで粋だったからモッズ」と切り返す。また「細身のモッズ・スーツを着て、その上にモッズコートを羽織って、お洒落なスクーターに乗っている人がモッズだろ」と紋切り型の定型イメージで言われれば、逆に「モダンで洗練されてて知的でクールな若者ゆえに彼らは、かなりの確率で細身のモッズスーツを着て、その上にモッズコート羽織って、お洒落なスクーターに乗るからモッズ」と説明する(笑)。

あと絶対にはずせないのは、「モッズはイギリス発祥の若者のカウンター・カルチャーである」ということだ。「カウンター・カルチャー」で一体何に対する対抗文化なのかといえば、当然イギリスは昔も今も確固たる階級社会で社会的・経済的に不平等な社会だから、モッズは下層の労働者階級(ワーキング・クラス)の若者文化なわけで、王室・貴族やブルジョア金持ちのアッパー・ミドルクラスに対抗する労働者階級の怒りの文化である。確かにモッズには、下層のワーキング・クラスの労働者の貧困の貧しさが常につきまとう。

例えばモッズな英国映画「さらば青春の光」を観たら即わかる。劇中のモッズな若者たる主人公のジミーは企業内での臨時雇いのトホホな雑用係の何でも屋だし、彼のモッズな友達仲間もスーパーのレジ打ちとか車の修理工やゴミ収集業など基本、肉体労働の単純労働職種に従事である。それでワーキング・クラスの英国階級社会への怒りから避暑地のブライトンへ行って、「ウィー・アー・ザ・モッズ!」の大合唱で行進デモをやったりする。

モッズな若者は長時間拘束で、おまけに低賃金な誰にでも出来る、つまりはいつでもクビにして取り替えがきくから、常に失業の危機にさらされる半熟練労働に従事な下層の階級に属する若者たちであった。しかも、それは本人の能力の有無や労働意欲云々の問題ではなく、最初から労働者階級の家に生まれた子供は自動的に親と同じ労働者階級の人生を送る。生まれながらにして最初から人生の進路が決まっている、その生まれながらの、どうしようもない社会的・経済的格差の階級の固定化が、つまりは「残酷な階級社会」というものだ。ワーキング・クラスの子供は親と同じせいぜい中卒か高卒で、家庭の経済的事情で(おそらくは)大学に行けないし、ゆえに学歴がないから企業の総合職へのホワイトカラーの就職なく下層で貧くて、まさに「出世の道はサッカー選手かロック・ミュージシャンになることだけ 」とまで言われる過酷なイギリス階級社会である。

モッズは下層の労働者階級であり、生活が苦しくて労働拘束時間も長くて、お金も自由な時間もあまりないが、そんな中でも「生活に余裕がないけれど、あえて余裕をかます」「人生や毎日の生活を楽しんでやろう!」という開き直りと、ワーキング・クラスの英国の階級社会への怒りから労働者ならではの洗練された誇りがあるような気がする。それで「何でも楽しんでやろう!」というところから、音楽やらファッションやらスクーターやらの選択センスのスマートさが二次的に自然とにじみ出て、結果として「お洒落」な人達と目される。

だから、現在でも経済的にも社会的にもそこそこ恵まれている中間層や、虚栄で虚飾の金持ちアッパー・クラスが「自身のファッションの見た目や自分の持ち物にめい一杯お金をかけて、例えば上等な仕立てのモッズスーツを着てレアで生産中止な今では入手困難なランブレッタなどのスクーターをレストアして街中でこれ見よがしに乗りまわして何かとお洒落。ゆえにモッズ」というのとは全く違う。

モッズはお金も自由な時間もなくても、それなりに工夫して洗練されたスタイルというか。そして、その裏にはいつも階級社会に対する不満の怒りがある。そのあたりの「モッズの精神性からくる生活全般に関するセンスのよさ」が私は好きだ。僭越(せんえつ)ながら、私も現在の日本社会の中で低所得な貧しい怒りに震える底辺階級なので、モッズな生き方に強く深く心から共感する。

さて結論は、

「モッズとは、労働者階級で基本貧しいのにモダンで粋であること。聴く音楽から読む本、着る服、乗るバイク、酒の飲み方、お金の使い方に至るまで、すべてがスマートでお洒落で生活全般の選択センスがよいこと。そして、その生活センスのスマートさの奥底に階級格差社会に対する真っ当な怒りを常に隠し持っていること。これこそがモッズだ」