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大学受験参考書を読む(66)板倉由正「エスカレーター式 日本史総合テスト7週間」

最近どうやら絶版の大学受験参考書が人気であるらしい。昔に定価で書店に並んでいた大学受験参考書が現在では絶版品切れの入手困難なために一時的に人気沸騰し、かなりの高額で取り引きされているというのだ。例えば、前に有坂誠人「例の方法」(1987年)という現代文の大学受験参考書があった。もともと定価¥750であるが、最近(2021年1月)テレビで本参考書が紹介されたらしく、その影響もあり本書は絶版品切れで入手困難であったため、昨今では定価の30倍の¥30000以上の価格がついてネット上の古書店などで取り引きされているらしい。

絶版・品切の入手困難な昔の大学受験参考書が投機の対象になって、それをせどりして高額転売したり、またそうした絶版参考書を「収集(コレクション)」と称して相当な金額にて買い集めたりするのは、正直私はよくないと思っている。「絶版の稀少本ならば高額になって当たり前。販売したい売り手と購入したい買い手がいて双方が合意の上であれば、どんな価格設定であろうとそれは合法的な経済活動の範囲だ」云々の、転売・せどりを容認する毎度の議論があるけれど、以前に例えば店頭で¥750で売られていたものを後に¥30000の値を付け販売して差額を手にするのは「合法的な経済活動の範囲内」で法律的には何ら罰せられることなく認められても、倫理的に私は全く感心しない。「絶版参考書を高値で売る方も、また買う方も、人としてどうなのか!?」の思いが率直にする。私ならばそうした昨今の絶版参考書ブームの流行には、とりあえず乗りたくないし、絶対に乗らないのである。

思えば、大学受験参考書というのは不思議なジャンルの書籍だ。小説ならば一度は単行本で出て、後に廉価の文庫本で再度発売されるし、専門の論文や学術書も後に書き手の著作集や全集が編(あ)まれ、そこで作品は再度世に出る。またそうでない書籍でも、だいたいは地域の公立図書館に蔵書としてある。ところが、書店売りの大学受験参考書は一度出てもすぐに絶版・品切れになって、再発されることは非常に希(まれ)だし、受験参考書は地域の図書館にはない。だから絶版参考書の人気は高まるし、時に投機の対象となり古書価格が異常に高騰して一部の人々が狂乱してしまう。参考書は書籍の中でもかなり特殊なジャンルで、一般的な書籍であるよりは、どちらかといえばすぐに絶版で入手困難になり取り引き価格が高騰する週刊誌や写真集らと同様な、特殊ジャンルの出版物であると思う。

さて、そうした所で私は特に絶版の大学受験参考書を収集しているわけではないが、自宅の書棚に今では入手困難の珍しい大学受験参考書はあるのかと思って見てみたら、洛陽社の板倉由正「エスカレーター式・日本史総合テスト7週間」(1964年)があった。その他にも洛陽社の昔の参考書が数冊、自室の書棚にある。昔、私が学生の頃は洛陽社の大学受験参考書は街の書店にあって適正に定価で販売されていたが、最近では洛陽社の書籍は書店にてほとんど見かけなくなった。洛陽社はもう廃業してしまったのか、近年では出版営業活動はやっていないらしい。洛陽社の名称は「洛陽の紙価(しか)を高める」(昔に中国の晋の左思が文学作品を作った際、これを写す人が多く、洛陽では紙の値が高くなったという故事から成語した、「著書の評判がよくて売れ行きのよいこと」のたとえ)に由来している。洛陽社といえば、昔は小西甚一の古文参考書「古文研究法」(1955年)ら名著のベストセラーを多く出していた印象が私には強い。近年の洛陽社は「洛陽の紙価を高める」ような増冊人気の書籍に恵まれなかったのか、最近では洛陽社の本を書店で見かけなくなって非常に残念である。

板倉由正「エスカレーター式・日本史総合テスト7週間」は、洛陽社から出ていた「エスカレーター式・総合テスト7週間」シリーズの内の日本史の問題集だ。日本史だけでなく本シリーズの参考書は皆そうであるのだが、全7週間で毎日問題演習を重ねる内容で、1日につき大問を4つほど「第1週・月曜日」から「第1週・火曜日」と毎日継続して問題を解く形式で、最終日の「第7週・土曜日」まで1日ごとにその日にやるべき日本史の問題があらかじめ掲載されている。そうすると結果、トータルで7週間で約170問の日本史大問をこなすことになる。1日も欠かすことなく週と曜日の指定掲載の「日本史テスト」を読者に毎日やらせて(ただし、いずれの週も日曜日の問題はなく、「日本史テスト」は日曜は休みである)7週間かけて一冊を完成させると自然と日本史の実力が身に付いているというのが本書のミソである。学生は本書に対し週と曜日のスケジュールを守らずにまとめて一気にやったり、時にサボったり、順不動で勝手にやってはいけない。毎日、指定の週と曜日に従って掲載の順序を守ってコツコツと地道に7週間かけて一冊の「日本史テスト」をやり遂げ完成させなければならないのだ。

本書「エスカレーター式・日本史総合テスト7週間」のタイトルに「エスカレーター式」とあるのは、第1週は原始・古代から始まって比較的易しい問題であるが、第2週や第3週以降で中世や近世の範囲の問題も入って来て徐々に問題が難化していき、最後の方の第6週や第7週になると近現代に加えてテーマ史や総合問題の難問も出てきて、まさに「エスカレーター式」に無理なく自然に日本史の受験勉強のレベルアップがなされるような編集の工夫が施されていることによる。本書に掲載の毎日やる「日本史テスト」は、共通一次試験が実施される前の各大学がそれぞれに作成し出題していた昔の大学入試の過去問である。東京大学を始め九州大学慶應義塾大学ら、昔の入試問題があって、今あらためて解いてみると全体的になかなか難しい日本史の問題だと私には感じられた。日本史に限らず、大学受験は近年のものよりも昔の時代の方が入試問題は難しく、大学側が入学志願者に求める学力は昔の方が厳しくて、はるかにレベルが高いと思える。

あと実際に毎日、週と曜日の指定通りに問題演習を重ねて、七週間かけて「エスカレーター式・日本史総合テスト7週間」をやってみたが、7週間もかけて一冊の日本史問題集を毎日やるのに中途で飽きてきて、「毎日やるのはめんどくさい。いっそのこと一気にやって早く本書を終わらせたい」の思いに幾度となく駆られ、正直私はツラかった(笑)。