アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

フリッパーズ・ギター 小沢と小山田(3)「カメラ トーク」

「フリッパーズ・ギター」(FIippers・Guitar)の2枚目のアルバム「カメラ・トーク」はジャケの色が柿色のオレンジなせいか、このセカンド・アルバムは「オレンジで明るい青春なイメージ」が強くある。

ファースト・アルバムで全曲を英語で歌って「なぜ日本語じゃないんですか?」と散々聞かれたので、本気だして2枚目を全曲を日本語詞で作って軽く名作の名盤完成だ。それで今度は逆に「前作が英語だったのに、なぜ今回は日本語なんですか?」とこれまた聞かれ(笑)、「えっ!英語?日本人なのに、わざわざ英語で歌うイヤミなバンドとかいるの。そいつら信じられないわ」みたいな、相変わらずのはぐらかしで言いたい放題だったフリッパーズの二人であった。アルバム「カメラ・トーク」は文句なく後々まで残る傑作だ。

私が特に好きなのはシングルの「カメラ!カメラ!カメラ!」だ。あとは最後までシングル候補曲だった「午前3時のオプ」と、おそらく歌詞の元ネタが村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」であろう「ビッグ・バッド・ビンゴ」。さらに、いかにもな雰囲気ありのインスト曲「クールなスパイでぶっとばせ」。いや、でもその他の曲も全て秀逸である。結局は「捨て曲なし」で「全曲よい」。だからアルバム「カメラ・トーク」は名作で名盤の傑作なのだろう。

フリッパーズ・ギターの曲の作詞は全曲を小沢がやっていた、クレジットは小沢健二と小山田圭吾の共通イニシャル「K・O」をもじった「Double・K・O・Corporation」(ダブル・ノックアウト・コーポレーション)名義の小沢と小山田の共作でボカしてはいたけれど。小沢の作詞センスが当時の同時代の人達よりも頭一つも二つも抜けてずば抜けていた。

「青春はいちどだけ」の「雪の中の墓あばきの青春」とか、「午前3時のオプ」の「世界は僕のものなのにと花束をかきむしる17歳の僕のいらだち」とか、「全ての言葉の意味はさよなら」の「分かり合えやしないってことだけを分かり合うっていう諦観(あきらめ)の虚無(ニヒリズム)」など。前述のように「ビッグ・バッド・ビンゴ」の歌詞の元ネタは村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」だろうし、「偶然のナイフ・エッジ・カレス」には「震えているのは寒さのせいじゃないのさ」云々の、井上陽水の名曲「氷の世界」からの引用もある。

小沢健二は東京大学・文学部英語学科・英米文学専攻だった。やはり詞世界の言葉のセンスがいいなぁ。「ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマービューティー計画」や「ワイルド・サマー、ビートでゴーゴー」の悪ノリした題名タイトルでさえ、あまり不興な感じがしないから。「フリッパーズでアルバム『カメラ・トーク』を作っていた頃はビートでゴーゴーなどの詞がバンバン書けて本当に気持ち良かった」趣旨のことを、後年のインタビューで大人になった小沢健二は語っていた。