アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

天才 岡村靖幸(3)「家庭教師」

おそらく岡村靖幸=「岡村ちゃん」の作品の中で、最高傑作に間違いないアルバム「家庭教師」。前作「靖幸」同様、曲がよいし、歌い方もフェイクするボーカルあり、泣き落としの裏声ありで緩急自在。曲順や全体の構成もよく、アルバム「家庭教師」はトータルなひとつの作品として大変上手くまとまっていると思う。

「どぉなっちゃってんだよ」で「好きだと言えないくせして、子どもみたいに死ぬ程言ってもらいたがってる。そうだろ?」と岡村ちゃんに聞かれれば、「うん」としか正直に答えようがないし、「一生懸命って素敵そーじゃん」て歌われたら「一生懸命って何か素敵かも」って素直に思う。前作よりも「聴く人に直接語りかける感」があって、「岡村ちゃん飛び出す絵本」のようになっている(笑)。

「宿題しな!ベィベー」の「家庭教師」での岡村ちゃんの変態ぶり(?)も相変わらずで、前にDVD「ライヴ・家庭教師」を見たら、この曲の変態セリフ部分をステージ上でも、しつこく熱心にやっていた。「ステップUP」では「ベイベー、おまえがいなけりゃ、俺なんか紙くずだぜ!」「おまえがいなけりゃ、お金持ってたって、しようがないぜ!」のハジけまくりのセリフ挿入。もう岡村ちゃんくらいだろう、日本のロックで曲中に日本語セリフ入れたり、一人芝居朗読したりしてもダサくならずに普通にカッコよくキマるのは。

また「ステップup」では「聖書」の「タンゴ!」同様、「マーチ!」で曲が展開するとこなんか岡村ちゃんの才能が大爆発。でも、なぜ「ステップUPするため倫社と現国学びたい」になるのか、なぜ倫社と現国なのか。「英語と数学じゃダメなの?」など昔からずーっと疑問に思っていたりする。

このアルバムの中で特によいのは「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」である。これは詞がよい。バスケの試合で「あともう15秒で、このままじゃ35連敗」。「誰もがもう諦めて苦く微笑む」なかで「あの娘、ぼくがロングシュート決めたら、どんな顔するだろう」。ロングシュート決めて「あの娘だけの汗まみれのスター」になりたい、でも「あともう15分で、この街とお別れしなくちゃ。窓の外からはパパとママが手を振っている」。そう転校してしまうのである。そんな最後のバスケの試合での少年の切ない歌だ。主人公の少年のひたむきさと仲間の友達や大好きなあの娘とのお別れの寂しさが、ひしひしと伝わってくる。

この曲の中で「汗で滑るバッシュー、まるで謡うイルカみたいだ」という歌詞があるのだけれど、それは自分の経験実感からして非常によくわかる。実際に体育館でシューズを履いて運動していると床と靴が擦れて「キュッ、キュッ」と音がして、それが本当にイルカの鳴き声に聞こえるのだ。「岡村ちゃん、上手いこと歌うなぁ」といつも私は感心しきり。