アメジローのつれづれ(最新)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

2021-06-03から1日間の記事一覧

江戸川乱歩 礼賛(18)「緑衣の鬼」

江戸川乱歩「緑衣(りょくい)の鬼」(1936年)は、以前に乱歩が絶賛したフィルポッツ「赤毛のレドメイン家」(1922年)の骨格を借り乱歩なりの趣向にて肉付け創作した、いわゆる「翻案小説」だ。そのため、本家のフィルポッツ「赤毛のレドメイン家」を既読…

江戸川乱歩 礼賛(17)「群集の中のロビンソン・クルーソー」

「群集の中のロビンソン・クルーソー」(1935年)は江戸川乱歩の随筆選に必ずといってよいほど収録されている作品で、乱歩の代表的エッセイといってよい。本作タイトルの「群集の中のロビンソン・クルーソー」とは、どういう意味のどういった人物なのか。 「…

江戸川乱歩 礼賛(16)「大暗室」

江戸川乱歩「大暗室」(1939年)は「暗黒星」(1939年)とタイトルが似ており、ほぼ同時期の雑誌連載作である。だからなのか、私はいつも両作を混同してしまう。また乱歩の通俗長編は長期連載にあたり、乱歩自身が結末をあらかじめ考えず場当たり的に自転車…

江戸川乱歩 礼賛(15)「暗黒星」

江戸川乱歩「暗黒星」(1939年)は戦前乱歩の明智探偵シリーズ、通俗長編の最後の方のものだ。話の概要は、奇人資産家・伊志田鉄造の一家を襲う血の惨劇の物語であり、神出鬼没で万能な犯人に一家は、ことごとく裏をかかれて伊志田屋敷の洋館にて一人また一…

江戸川乱歩 礼賛(14)「化人幻戯」

「化人幻戯(けにんげんぎ)」(1955年)は、江戸川乱歩が六十歳の還暦記念パーティー席上にて「還暦を機に若返って新作を書きます」と明かしたもので、江戸川乱歩ひさびさの本格長編である。しかも、初出連載は推理ミステリー雑誌「宝石」ということで往年…

江戸川乱歩 礼賛(13)中井英夫「乱歩変幻」

江戸川乱歩研究や探偵小説評論、乱歩作品に関する書評は昔から多くあるが、なかでも私にとって印象深い乱歩についての文章は、創元推理文庫「日本探偵小説全集2・江戸川乱歩集」(1984年)巻末に書き下し解説として付された中井英夫「乱歩変幻」だ。 探偵小…

江戸川乱歩 礼賛(12)「屋根裏の散歩者」

江戸川乱歩の短編と長編を含めた全時代(オールタイム)ベストを選ぶとすれば、おそらく世人の一致するところで初期短編の「屋根裏の散歩者」(1925年)は必ず上位に位置するに違いない。少なくとも私の場合、乱歩のオールタイムベストとして「屋根裏の散歩…

江戸川乱歩 礼賛(11)「D坂の殺人事件」

江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」(1925年)が昔から好きだ。本作は本格の短編であり、「日本の開放的な家屋では密室事件は成立しない」という従来の声に対抗して乱歩が書いた日本家屋を舞台にした密室殺人である。密室の他にも格子越しに二様に見える浴衣柄の…

江戸川乱歩 礼賛(10)「何者」

江戸川乱歩の全短編の中で私は「何者」(1929年)という本格の作品が特に好きだ。「何者」は、乱歩の全作品の中で個人的ベスト3以内に入るほどの出来栄えであり、本当に素晴らしい隙(すき)のない清々(すがすが)しい本格推理だと思う。 (以下、犯人の正…

江戸川乱歩 礼賛(9)光文社文庫「江戸川乱歩全集」

江戸川乱歩に関し、皆さんは小学生の頃にポプラ社の「少年探偵団」シリーズでジュヴナイル(少年少女向け読み物)の乱歩に親しみ、それからしばらく空白があり、大人になって再び江戸川乱歩を読み返して再評価する「乱歩返り」(?)のパターンが、おそらく多…

江戸川乱歩 礼賛(8)「湖畔亭事件」

江戸川乱歩「湖畔亭事件」(1926年)の概要は、およそ次の通りだ。 「湖畔の宿で無聊(ぶりょう)にかこつ私は、浴室に覗き眼鏡を仕掛け陰鬱(いんうつ)な楽しみに耽っていた。或る日レンズ越しに目撃したのは、ギラリと光る短刀、甲に黒筋のある手、背中か…

江戸川乱歩 礼賛(7)「盲獣」

江戸川乱歩「盲獣」(1932年)に関して、私は昔から「非常にもったいない、惜(お)しい、残念だ」という思いが拭(ぬぐ)えない。乱歩の「盲獣」は「エロ・グロ・ナンセンス」の猟奇のその手の作品として、かなりの着想アイデアと筋書きで申し分がない。た…

特集ドイル(6)「シャーロック・ホームズ 最後の挨拶」

小説をテレビドラマなり映画なりに映像化すると、だいたい原作イメージから大いに外れ、いつも失望すること多いが、「シャーロック・ホームズ」のドラマ化に関しては例外だったと思う。イギリスのグラナダTV制作、ジェレミー・ブレッド主演の「シャーロック…

江戸川乱歩 礼賛(6)「陰獣」

江戸川乱歩は、昭和の始めに明智小五郎の長編物「一寸法師」(1927年)を「朝日新聞」に連載して、あまりの出来の悪さに自己嫌悪に陥り「一寸法師」連載終了後に失意の放浪の旅に出て、しばらく休筆で筆を折る。江戸川乱歩という人は探偵小説家として案外い…

特集ドイル(5)「シャーロック・ホームズの叡智」

コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を読むなら新潮文庫の延原謙の訳が最良だ。昔から定番であるし。しかし、他社文庫からもホームズ翻訳は出ていて、しかも近年ちくま書房が相当な本気を出して本格なホームズ全集を文庫で出した際には、本編小説以…

江戸川乱歩 礼賛(5)「目羅博士の不思議な犯罪」

江戸川乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」(1931年)は題名が素晴らしい。タイトルだけで言えば、乱歩の作品では「ぺてん師と空気男」(1959年)と双璧をなす名タイトルであるように思う。 乱歩作品の中で、相当に秀逸と思える印象深い名タイトル「目羅博士の…

特集ドイル(4)「シャーロック・ホームズの事件簿」

コナン・ドイルによる「シャーロック・ホームズ」は英米の海外だと普通に大人が楽しんで愛読する書籍であるが、どうも日本ではホームズはジュヴナイル(少年・少女向けの児童読み物)の感が昔から拭えない。小中学生の頃には児童物に翻訳されたホームズを皆…

江戸川乱歩 礼賛(4)「蜘蛛男」

人間は「無知であるがゆえに幸福」ということがある。江戸川乱歩の「蜘蛛男」(1930年)を私は10代の時に初めて読んだが、初読時その結末に驚いた。今でも探偵小説全般に無知だが、当時はさらに探偵小説のことをほとんど知らなかったので「まさか!こんな展…

特集ドイル(3)「シャーロック・ホームズの帰還」

戦後の探偵小説評論にて中島河太郎の功績は外せないと思うが、戦前にも優れた探偵小説の本格評論を書く人はいた。井上良夫である。井上はコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」について、ホームズ短編群を読み返した後、次のように書いている。「読み…

江戸川乱歩 礼賛(3)「心理試験」

江戸川乱歩「心理試験」(1925年)は初期の短編であり、私が好きな乱歩作品だ。主人公が「心理試験」の裏をかこうとして、逆に自身の無意識の心理によって墓穴を掘る話である。 読み所は、悪知恵で工夫を凝らす主人公が自ら無意識のうちに墓穴を掘り最終的に…

特集ドイル(2)「シャーロック・ホームズの思い出」

コナン・ドイルによるホームズ短編連作集の第二弾は「シャーロック・ホームズの思い出」(1894年)で、すでにこの頃は早くもドイルはホームズの推理連載を辞めて心霊物や冒険譚を書きたかったので、「最後の事件」にてライヘンバッハの滝壺にホームズを落と…

江戸川乱歩 礼賛(2)「人間椅子」

江戸川乱歩の小説は探偵推理が土台で、それに大正デモクラシーの「モダニズム・テイスト」か、昭和初期の「エロ・グロ・ナンセンス」の表層の味が加わるように思う。私は後者の猟奇で恍惚な「エロ・グロ・ナンセンス」よりも、前者の明るくて馬鹿っぽい「モ…

特集ドイル(1)「シャーロック・ホームズの冒険」

コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」は探偵小説の短編連作シリーズものの創始の草分けで基本である。昔から何度も繰り返し読み返しているが、最近これまた読み返してみたので、いつも読んでいる新潮文庫、延原謙訳の定番本にのっとって話を。まずは…

江戸川乱歩 礼賛(1)「孤島の鬼」

江戸川乱歩の素晴らしさを誉(ほ)め称(たた)える、時には乱歩の駄目な所にも半畳を入れて無理に誉める、今回から始まる新シリーズ「江戸川乱歩・礼賛(らいさん)」である。 「乱歩の前に乱歩なし、乱歩の後に乱歩なし」。江戸川乱歩である。日本の探偵小…