私は学生時代からそれとなく気付いていたが、日々やる高校の授業での教科書レベルの数学と、校外模試や入学試験で実際に出題される大学受験レベルの数学とでは明らかに異なる。教科書での練習問題や中間・期末の学内の定期考査で高得点が取れて内申点もそこそこ良く、「私は数学がどちらかといえば得意」などと思っていても、全国で一律に実施される校外模試やいよいよの大学入試では、高校の授業にて日常的に学習している数学とは明らかに違い教科書の標準問題以上の難度で、ほとんど歯が立たず「入試で数学は惨敗」のようなことは実際よくある。
私が学生の時、高校での数学は授業中に教科書を使って基本の定理・公式証明とか例題を中心にやって、数研出版の「チャート式・数学」を副読本で事前に全員購入させられていて、「チャート式のこのページの問題を明日までにやってこい」のような数学の宿題を毎回出されていた。今にして思えば、数研出版「チャート式・数学」の各本も赤チャート(標準的なチャート式)とか白チャート(「基礎と演習」)など色々な種類があったが、どちらかといえば高校の授業での教科書レベルの数学の延長上にある基礎的な問題が主で、「チャート式」を一生懸命にやっても「そこまで数学が分かった」とか「入試で出題される大学入試レベルの数学に、だいたいは対応できる」というようなことには、なかなかならないのである。
そこで東京出版の月刊誌「大学への数学」である。本書は、大学入試の過去問が掲載され、標準的な普通科高校でやられている教科書レベルの数学の授業にはない、予備校講師が入試対策で指導するような上手い解き方も時に教えてくれる。よって高校生や大学受験生は、学校での数学授業と同時に「大学への数学」を自学自習でやるとよいと思える。そうすれば、教科書や校内での定期考査以上の難度の校外模試や大学入試の数学にも対応できる。入試レベルの数学問題も確実に解けるようになる。
現在でも毎月出ている月刊「大学への数学」と、たまに出る増刊「大学への数学」の「一対一対応の演習」など、私が高校生だった1980年代の昔からあった。しかも最近の最新号「大学への数学」を見て、これがページのレイアウトや問題掲載のあり様、簡潔で本質的なクドくない解答解説記述ら、数十年を経た2020年代以降でもほとんど変わっていないのだ。昔のまんま(笑)。東京出版「大学への数学」編集部の一貫してブレない堅実な仕事ぶりにさすがに感動する。
近年では「大学への数学」は毎月の各号に加えて、春先に新受験生に向けた「入試数学の基礎徹底」の増刊号がまず出て、その後に「一対一対応の演習」の各分野、さらにはその他増刊も逐次刊行されるようである。最低限それらを各自家庭学習にて着実にやっておけぱ、高校生が体得しておくべき大学入試に出る数学はマスターできるのではないか。
私は大学受験を終えた後、「大学受験への数学」の「一対一対応の演習」の数Ⅰの整数から最後は数Ⅲの微積分の分野まで、毎日少しずつやって一年以上かけて高校数学を全部やり直したことがあった。その時は日々充実して、毎日がとても楽しかった。今でも時々、街の書店に寄ると東京出版の「大学への数学」がたまたま目に止まり、ふと購入して問題演習を重ねることがある。そのたびに「数学は面白いよな」と思う。