アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(69)鈴木誠治「物理が初歩からしっかり身につく 力学・熱力学編」

鈴木誠治「物理が初歩からしっかり身につく・力学・熱力学編」(2014年)を先日、たまたま入手して読んだ。高校物理の参考書で「入門」とか「世界一わかりやすい」とか「はじめからていねいに」など、苦手な受験生や初学の高校生に向けた物理の参考書は数多く出ているけれど、この本は「物理が苦手」や「物理は初学」の人に対し決定的であると思う。類書の現行の物理の参考書の中で最も分かりやすく初歩の超基本からかなりの丁寧な解説で、仮に本書を読んでも高校レベルの物理が分からないようなら、「もう物理はあきらめろ。物理の選択はやめておけ」と忠告できるほどのものが本参考書には確かにある。

鈴木誠治「物理が初歩からしっかり身につく・力学・熱力学編」は、高校生のみならず、将来理系学部への大学進学や理系専攻の職種を志望で、後々物理を科目選択して学ぶであろう現在優秀な前途有望の中学生に読ませて、あらかじめ高校物理を独習させるのもよい。私なら、もし周りにそうした年代の中学生がいたら、おもむろに黙って本参考書を渡し、無言で「この本、面白くて為になるからやっておけよ」の暗黙メッセージをさり気なく添えるだろう。

昔、私は割と関西圏では有名な、そこそこ偏差値も高く毎年、京都大学合格者を多数輩出する「京大への現役合格率の高さ」を売りに生徒募集している、ある私立の中高一貫校に出入りしていたことがあった。その学校は中高一貫で外部試験の高校入試がなく、全生徒がエスカレーター式の内部進学だから、中学3年生の時点で高校1年の教科内容を通常授業で先取りしてやってしまう。そして高校1年では高2の内容を、高校2年の時にはすでに高3までの全入試出題範囲を早くも終えているので、残りの高校3年生の4月から2月の入試までの約一年間弱は、ひたすら大学入試の過去問演習をやるようなカリキュラムだった。

私立の中高一貫の内部進学なので、中学生に本来は高校で学ぶべき教科内容を先取りして教えても、外部の教育機関には目立たず保護者からもクレームなどは来ず、他の公立高校の大学受験生と比べて当校の生徒は明らかに入試に関しアドバンテージがあった。大学受験科目以外の、体育や現代社会や音楽・美術・家庭科の授業時間は最大限に削って日々、大学への現役合格のために、教育行政的にはかなりきわどい教育法規違反スレスレの際(きわ)でカリキュラム改編してその学校は組織的に一丸となってやっていたけれど、「そりゃ、外部の公的な教育委員会からカリキュラム違反の是正指導が入って時に荷重なペナルティを科せられるかもしれない、ある種の『危ない橋』を渡って、中学生の時から高校内容の授業を先取りで次々にやらせて、後に受験対策にのみ傾注できる時間作りのアドバンテージを貯めて学習指導していけば、確かに京大への現役合格連発で華々しい進学実績は毎年出るわな」と正直、私は思ったものである。

しかし、学校によるカリキュラム改編という組織的な働きかけ以外の所で、個人が自身の判断で勝手に個別に中学の時から高校の授業内容を先取りしてやるには、何ら問題はないのである。中学生からでも、もし当人にそれなりの実力があり理解できるなら、例えば鈴木誠治「物理が初歩からしっかり身につく」らの良書を読んで勝手に高校物理を早めに学習しておいて良いのでは、と私には思える。