アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(79)大谷浩三「入試日本史 日本史精説」

昔はまだ東進ハイスクールはなくて、全国展開の三大予備校といえば、駿台予備学校と代々木ゼミナールと河合塾で、「生徒の駿台、講師の代ゼミ、机の河合」とか言われてた(笑)。駿台は受講生のレベルか高く、代ゼミは人気講師の看板が強いのがウリで、河合塾は大学の大教室にあるような長机ではなく、高校で使う一人机で校舎設備が整っていた程度の意味である。

そして、これら全国展開の三大予備校は全国書店販売の大学受験参考書を手がける出版・販売部門をそれぞれに持っていて、駿台予備学校は「駿台文庫」であり、代々木ゼミナールなら「代々木ライブラリー」で、河合塾であれば「河合出版」というように各予備校ともに、本科の内部テキストや所属の専任講師が書き下ろしの参考書、各予備校主催の全統模試を再録した問題集など、出版事業においても全国展開で勢力的に幅広くやっていた。

私が高校生の時は、特に河合塾の河合出版の書店売り大学受験参考書が好きでよく読んでいた、昔にあった河合出版の「新・秘伝のオープン」など、今にして思えば、なかなか魅力的な参考書シリーズのタイトルである。「河合塾専任講師陣が長年の経験で培(つちか)った秘伝を公開」の売り文句で、「なるほど、教科書には載っていなくて高校の授業では教えないような、予備校のプロ講師による入試過去問分析の研鑽(けんさん)に基づく効果的なまとめの上手い教え方とか、受験の裏テクニックのノウハウを河合塾の予備校講師陣は豊富に持っていて、それら知識・方法の『秘伝』は門外不出で普段は予備校に通う生徒にしか教えないのだけれど、本シリーズでは『秘伝のオープン』で蔵出しして一般公開してくれるのだな」の非常に期待を持たせる魅惑の(笑)、河合出版の「新・秘伝のオープン」のシリーズ・名タイトルである。

大谷浩三・岡野尚起・田中君於「入試日本史・日本史精説」(1988年)は、河合塾の河合出版から出ていた昔の日本史参考書だ。出版元の河合出版からの公式の紹介文には、

「国公立から私立大まですべてに対応する参考書です。左頁は、論述対策として暗記よりも論理的に考える力を養成できるよう、教科書よりさらに詳しく解説してあります。右頁は主に私大入試対策として、左頁の項目をよりわかりやすく表形式でまとめました。歴史の大きな流れをつかみ、因果関係を時代の流れの中でとらえ、反復しながら基礎を固めることが大切です」

とある。

本書は全580ページで相当に分厚い。問題集ではなくて日本史の概説書である。表紙に「高校日本史教科書に密着する河合塾入試日本史の決定版!」とあるように、標準的な高校の日本史教科書である山川出版社「詳説・日本史」と同山川出版社「日本史B用語集」をさらに細かく解説したような「決定版」的な詳しい内容である。これは本書執筆に当たり、入試過去問を踏まえて早稲田大学や慶應義塾大学ら、以前に難関私大の入試で出た語句・内容を漏(も)らすことなく網羅で収録しようとする本書の編集方針に由来しているに違いない。その結果、本参考書では「教科書よりさらに詳しく解説してあります」という事態になっている。

公式紹介文にあるように、「入試日本史・日本史精説」は、左ページは教科書形式の文章による歴史解説で、右ページには予備校講義での板書のような簡潔な図表まとめの掲載となっている。史料も解説されている。巻末には「重要用語」の長いまとめもある。

まぁ、これだけ詳細な、まさに「精説」と呼べる内容を入試前までにほぼインプットできていれば、受験日本史に関しては難関私大の記号選択でも国公立の用語記述でも、ほとんどの大学に対応できるだろうな。