アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

大学受験参考書を読む(89)茨木智志「詳説 世界史論述問題集」

「世界史論述練習帳」(2001年)や「センター世界史B各駅停車」(2006年)の大学受験参考書を出している元駿台予備学校・世界史科の中谷臣が自身のホームページ「世界史教室」にて、他の予備校講師が執筆の世界史の大学受験参考書を批評し採点していたことが以前にあった。中谷による各参考書への批評の評論は誠に厳しく辛辣(しんらつ)で、例えば河合塾の青木裕司「世界史B講義の実況中継」(2005年)シリーズ各本には、「世界史の歴史理解に明らかな間違いがあり、参考書解説の内容が正確ではない」とか、「こんな項目の事柄は実際の大学入試では問われない、ゆえに青木のこの参考書記述は受験生向けの参考書として適切でない」旨の相当に痛烈なダメ出しを、中谷臣は同業プロの世界史の予備校講師に連続してやっていた。

同様に、中谷が以前に所属で古巣の駿台予備学校の駿台文庫の江島明・鈴木晟「世界史論述問題集・45か条の論題」(2006年)や、その他山川出版の茨木智志・鳥越泰彦・三木健詞「詳説・世界史論述問題集」(2008年)に対しても、「場当たり的な解説と解答が主で、これら参考書は世界史論述の有機的な方法論を何ら教えない」旨の酷評がほとんどであった。このように世界史の大学受験参考書で、特に論述対策の書籍に対する中谷の他の参考書批評の批判の攻撃の筆致が異常に強くなるのは、中谷臣が添削の個別指導を出講の予備校のみならずネットを介して全国の受験生に対し大々的に当時からやっていて世界史論述の受験指導に自身が相当な実績の自信があるため、またその頃すでに中谷臣は「世界史論述練習帳」の自著の論述対策参考書を出しており、「自分が執筆の論述対策の世界史参考書は他のものと違い決して場当たり的ではない、毎回決まった手順確立の、世界史論述の有機的な方法論を教えることができている」の並々ならぬ自負があったからだと思われる。

茨木智志・鳥越泰彦・三木健詞「詳説・世界史論述問題集」は、私も昔から知っている世界史論述対策の大学受験参考書で、確かに中谷臣が痛烈批判するように「場当たり的な解説と解答が主で、この参考書は世界史論述の有機的な方法論を何ら教えない」の評価は妥当である気もするが、しかしそこまで激しく批判して低評価を下すこともないのでは、と当時より思ったものである。

山川出版の「詳説・世界史論述問題集」は昔からある世界史論述対策の参考書のさきがけで、本書の旧版の初版は1999年、2004年が初版の改訂版での著者らの「まえがき」には、「本書は、1999年に、大学受験対応の、本格的な論述問題集として刊行されました。当時、世界史の論述問題集は他にない状態でした。受験生の立場に立った使いやすくかつ歴史の本質が分かる問題集を作ろうとした編集者一同の志は、現在まで変わっておりません」とある。確かに昔は本格的な世界史論述対策の大学受験参考書は、まだなかった。本書「詳説・世界史論述問題集」以外に「当時、世界史の論述問題集は他にない状態」であったのだ。このことからも山川出版「詳説・世界史論述問題集」の画期の、かつて果たした時代の重要性を認めたい。

また同様に「まえがき」には次のようにもある。

「本書は、過去10数年にわたる大学入試問題を分析・検討した結果、最低これだけをやっておけばどんな問題にも応用がきくと思われるもののみを厳選して、作成しました」

このように「最低これだけをやっておけばどんな問題にも応用がきくと思われるもののみを厳選」と書いてはいるけれど、「厳選」と言いながら本書の収録問題数は類書の世界史論述問題集に比べて異常に多いのである(笑)。いずれも実際の大学入試に出た過去問の世界史論述であるが、通史で例題が全93題と練習問題が全84題、テーマ史で例題が全22題と練習問題が全17題で、収録問題数は何と!合計で216題の世界史論述問題を解説をつけての模範解答を載せて一挙に掲載。これだけの通史とテーマ史を含めた世界史論述の入試過去問に試験前に事前に目を通しておけば、的中ないしは類似問題に入試本番当日に遭遇する可能性は相当に高いはずであり見事、大学入試の世界史論述に間違えなく対応できると思われる。

山川出版「詳説・世界史論述問題集」に関し、中谷臣による「場当たり的な解説と解答が主で、この参考書は世界史論述の有機的な方法論を何ら教えない」旨の批判も、なるほど当てはまるような気もするが、とりあえず日頃から本書の模範解答を読んで、採点の際の加点要素や論述構成の大体のポイントを覚えておけば、どんな大学の世界史論述にもまずまず対応できるだろう。この意味で山川出版の茨木智志・鳥越泰彦・三木健詞「詳説・世界史論述問題集」は、私にはなかなかの良著で有益な世界史論述の大学受験参考書であると率直に思える。加えて本書は大学入試が終わった後に読んでも「教養の世界史」として大変に参考になり、勉強になるのである。