アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(85)塚原哲也「日本史の論点・論述力を鍛えるトピック60」

近年、教学社から出ている「難関校過去問シリーズ」の「東大の日本史・25カ年」(2008年)にて東京大学二次試験、日本史論述問題の対策指導に定評がある駿台予備学校の塚原哲也である。その塚原が参加の共著、塚原哲也・鈴木和裕・高橋哲「日本史の論点・論述力を鍛えるトピック60」(2018年)は、読み味が同じ駿台予備学校の安藤達朗による安藤「日本史講義・時代の特徴と展開」(1994年)とかなり似ている。両書ともに国公立大学二次の日本史論述対策の参考書であり、論述の背景知識や基本事項が教科書や他参考書以上に丁寧に解説されている。同じ駿台文庫であり、塚原「日本史の論点」は安藤「日本史講義・時代の特徴と展開」の正統な後継書であると言ってよい。

駿台文庫「日本史の論点・論述力を鍛えるトピック60」は、「はじめに」にて「本書は第一に、基礎知識を習得するための参考書である。第二に、論述問題に対応できる学力を鍛えるための練習帳である」とある。続く本文でも「本書を使って何ができるか」とあって、

「(1)論述問題に対応するための作法を身につける。(2)定型的な論点に対する理解と表現をストックする。(3)要約することで幹と枝葉を区別する」

の3項目が「本書の効用」として挙げられている。このように本書について様々に長く述べられているけれども、要するに本書は大学入試の日本史論述対策の読み物である。本参考書を通して読者は日本史論述に対応の作法と実力とを身につけることができる。実際の入試過去問の収録はなく論述問題演習ではなくて、「論述力を鍛えるトピック60」という原始・古代から近現代まで全時代の定番論述テーマを60個提示して、それら「日本史の論点」の60トピックの解説を通して、大学受験の日本史論述にて絶対に書かなければいけない論述の柱の加点要素、そのテーマの時代背景、他の時代や類似の歴史事象との対比らをインプットすることで日本史論述問題に万全を期するの趣旨である。

「日本史の論点・論述力を鍛えるトピック60」のタイトル通り、本書は全60の論述トピックとそれに連なるいくつかの論点からなる。例えば、

「トピック1・原始社会の墓制。論点1・縄文時代の墓制は社会のあり方とどのように関連しているか。論点2・弥生時代中・後期の墓制は社会のあり方とどのように関連しているか。論点3・古墳時代の墓制は政治・社会のあり方とどのように関連しているか」

また例えば、

「トピック33・江戸時代の経済と株仲間。論点1・享保改革期に幕府が始めて株仲間を公認したのはなぜか。論点2・19世紀前半、多数の村々を結集して国訴が発生したのはなぜか。論点3・天保改革での株仲間解散策が失敗したのはなぜか」

同様に、

「トピック36・明治新政府の成立。論点1・大政奉還と王政復古を対比せよ。論点2・版籍奉還と廃藩置県を対比せよ」

というように。大学受験用の日本史論述対策の参考書として本書は詳細で内容濃く、解説文も硬質であり、上級レベルの大学受験参考書であると思う。それゆえ難関大学志望の現役の大学受験生のみならず、受験勉強を外れたところで学校を卒業した社会人が日本史の教養を高めるために本書を熟読する使い方も有用である。それほどまでの詳細で丁寧な日本史論述対策の大学受験参考書の良書といえる、駿台文庫の塚原哲也・鈴木和裕・高橋哲「日本史の論点・論述力を鍛えるトピック60」は。