アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

京都喫茶探訪(2)クンパルシータ ふたたび

京都には必ず一度は行くべき、行っておいて損はない老舗(しにせ)な良い喫茶店が多い。しかし、そういった歴史ある「老舗な優良喫茶」が数多くある京都という激戦都市の激戦区で、どの店にも同じくらい頻繁に足繁く何度も通うことはできないわけで。地理的なものや店との相性などもあって。

例えば、上七軒にある「静香」は白梅町のあちらの方まであまり出かけないので地理的な理由で私は、そんなに行っていない。また河原町四条近辺にある「ソワレ」や「みゅーず」や「築地」や「フランソワ喫茶室」は、いずれも軽く数回行った程度。河原町四条近辺で喫茶に入るなら、普通に(今はなき)タンゴ喫茶の「クンパルシータ」に行っていたから。

クンパルシータはママが独りでやっていて、コーヒー1杯が出てくるのに確かにかなり待たされて時間かかる。そして残念ながらもう閉店してしまったが、最後の方の閉店間近の他の人の喫茶巡りのブログや京都旅行記を読むと、コーヒー1杯を淹(い)れるのに軽く2─3時間はかかって待たされたらしい。しかし私が主に通っていた1990年代は、もちろん注文してコーヒーが出てくるまで他店よりは時間がかかって待たされたけれど、だが比較的テキパキしていて長くても1時間待ち、早くて30分くらいだった。年とともに、だんだん手が遅くなってくるのかな。

結局のところ「喫茶店とは文化」だと思う。文化というのは、お金や時間がかかり、時にめんどくさくて、ひと手間いるものなのだ。しかし、そのひと手間の効率の悪さが非常に味わい深いわけで。

今どき街に出てコーヒーを飲もうと思えば安くて、しかも注文したら待たされずに商品がすぐ出てくる店など、たくさんある。ファストフード店に行けば即座に紙コップでコーヒーが出てくるし、しかもワンコイン¥100前後で値段もお得だ。外資系のカフェでも比較的安価で¥300前後で、そこそこな味のコーヒーが楽しめる。だが私は多少は値段が高くて¥500くらい出しても、しかも時に1杯のコーヒーが出てくるのに時間かかって待たされるとしても、そんな喫茶店に入ってコーヒーが飲みたい!クンパルシータで待たされている時、いつも「喫茶店って文化だな、文化の味と薫(かお)りだな」と思っていた。そのことを肌身に強く感じていた。

コーヒー1杯そのものの純粋な単価は、おそらく¥20前後だ。その他は設備費や人件費だろう。しかし、本格的な喫茶店に入って1杯¥500前後のコーヒーを頼む。コーヒーの価格は、喫茶の椅子やテーブルや壁紙の家具内装、流れる音楽や店主のセンスら喫茶店全体の雰囲気もコーヒー1杯の値段に含まれるから。店舗の外観、家具調度や店主の趣味、人柄に敬意を表して、それらにも金銭を払っているから多少値段が高くても全然大丈夫、自分の中では合点(がてん)がいって勘定は合う。

京都の老舗喫茶店も企業体のチェーン展開のところはよいが、個人経営の喫茶は店主の高齢化や経営の事情が様々にあって続けるのは難しいのかもしれない。四条木屋町の名曲喫茶「みゅーず」が閉店したとき、かなり驚いた。ずっと続けると思っていたのに、当時の閉店間際の店長の雑誌インタビューを読むと、未練なく割かしスパッと決心して辞めた感じだったので。とにかく伝統あるよい雰囲気を残した老舗な喫茶店は、できることなら長く続いてほしい、続けてほしいと心のなかで私は切に祈る。