アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

東京スカパラダイスオーケストラ大百科(16)「Best of Tokyo Ska 1998─2007」(茂木欣一)

「東京スカパラダイスオーケストラ」のベスト盤「Best・of・Tokyo・Ska・1998─2007」は、初回限定には近年までのPV収録のDVDが付いている。

前に谷中敦が、「金管楽器は誰がどんな音を出しているのか見てすぐ分かるから良い」というようなこと言っていたが、まさにその通りだ。スカパラはライヴでの演奏を観てすごく面白いし、ビジュアルとしても大変に映(は)えると思う。昔は「セサミストリート」と「マライの仔象」とでのトランペットとトロンボーンvsサックス隊の対決フォーメーション(言葉では説明しにくい)や、「モンスター・ロック」の盛り上がり所でのホーンセクションの縦1列隊形など、ライヴで動きを合わせる演出を案外に細かくやっていた。メンバー当人たちは「事前に動きを合わせるとか、僕らあまり考えてません」などスカしてうそぶいていたけれど、昔は用意周到に考えてかなり細かくやっていた。

このベスト盤では「歌モノ3部作」が2回分入っているのも、うれしい。田島貴男との「めくれたオレンジ」と奥田民生との「美しく燃える森」が私は好きだ。特に「美しく燃える森」の谷中の歌詞は最高によいと思う。

茂木欣一さんのことなど。ドラム担当。この人は最後に新しくスカパラに入った正式メンバーだが、だからなのか、結成当時からいるオリジナルの初期メンバーに対し非常に礼儀を尽くす、とても気遣っているところがあると思う。具体的に上手く言えないが、ライヴ始まりでメンバーがステージに上がって各自が受け持ち楽器にセットで入るまでの細かな動作云々とか、毎回のライヴMC発言での言葉の端々に茂木の初期メンに対する細かな気配りを私は感じる。しかしながら、いかにも「実は私、気を使ってます」で周囲に悟られず、あくまで相手に心理的負担の圧迫を与えない自然体なところが茂木欣一には、この人の生まれ持っての資質の良さ、育ちの良さといったものが感じられる。

茂木欣一は、もともと「フィッシュマンズ」(Fishmans)で音楽活動をやっていて佐藤伸治を亡くし、また同様にスカパラは青木達之を亡くし、青木の後に茂木が正式ドラマーでスカパラに加入して「活動の途上で突然に仲間を亡くしたバンドマンの気持ち」を互いに身に染みてよく分かっていると思う。

ドラムというパートは、その人が最初にスティックを鳴らして「せーの」で合図を出して曲演奏が始まったりするから、ドラマーでものすごく勘の悪いタイミングを取るのが下手な人だったり、コミュニケーション不全で普段からメンバーと上手に意思疎通が取れていない人がドラムを担当すると、そのバンドは本当に苦労する。技術的な演奏ミスがなくても、曲の出だし気持ちの面で精神的に毎回つまづくから。茂木欣一はひねくれや屈折がなく、スカパラに自然に溶け込んでいて、さわやかで健全というか見た目もいつまでも若い好青年だし、「精神的に健康な人って茂木さんみたいな人のことを言うのだろうな」と私はいつも思う。また、この人はライヴが終わってステージをはけるときの、最後の「じゃあまた!」みたいな客席へ挨拶の笑顔が毎回、最高なんだ(笑)。ライヴ終わりの茂木欣一のさわやかな退場に毎回、私はノックアウトだ。茂木はFMラジオを一時期やっていて、しゃべりも番組司会の進行も上手で、これまたさわやかだ。スカパラのメンバーがゲストで番組に来ると「欣ちゃん、しゃべり上手いね」と、ほとんどのメンバーが感心して帰っていく。

茂木欣一は、ポーカーフェイスではなくて感情を表に出して本当に楽しそうにドラムを叩くのでライヴを見ていると、こちらまで自然と楽しくなる。前に両国国技館の360度の円形回転ステージで、彼がドラム席の定位置を離れてステージ上をうろちょろ歩き回るのが面白くて爆笑した。

茂木欣一のスカパラでの曲といえば、彼が歌う曲が骨頂だ。「銀河と迷路」や「世界地図」など、谷中敦が作詞の歌詞内容も含めて茂木のさわやかな歌いっぷりが良い。ただ私は昔からドラマーがペダルを踏んで太鼓を叩いて、不自然な姿勢で身体を揺らしながらライヴで歌う姿を、いかにも歌いにくそうで大変に気の毒に思っていた。元「YMO」の高橋幸宏や稲垣潤一、昔の「C・C・B」の白メガネのドラムの人など(笑)。スカパラでもライヴで茂木がドラムを叩きながら身体を揺らして歌う姿は非常に歌いづらそうで正直毎回、気の毒な思いがする。