アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

大学受験参考書を読む(43)船口明「決める!センター現代文」

船口明「きめる!センター現代文」(2014年)は、センター試験・現代文対策の良い大学受験参考書だ。私は読んで大変に勉強になった。近い将来、センター試験・現代文のような客観式選択の国語の大学入試はなくなって別の試験方式になってしまうかもしれないけれど。

「きめる!センター現代文」のタイトル通り、センター試験の現代文(評論と小説)に特化した大学受験参考書であり、ゆえにセンター特有の長い本文と、これまた長い選択肢の見極めの解法を詳しく述べている。特に小説問題の解き方まで詳しく解説されている所が他著にはない、本書の良さだと言える。普通の参考書だと、どうしても評論読解が主で小説問題の対策が手薄になってしまうので。

船口明が執筆の他の現代文の参考書も平行して読んで私が強く感じるのは、もともとこの人は「主語と述語の対応」や「指示語の内容追跡」や「並列では何と何が並べられてセットになっているのか」とか「添加で何が新たに論旨にプラスされたか」など、一文ごとの文構造や一文一文の文章の繋(つな)がりに着目した細かなミクロの読みが非常に上手い。だから「きめる!センター現代文」でも評論読解の場合、傍線部の文章を分節化して着目すべきポイント群に分け、それらポイントの該当部分を本文から探し見つけ出し、それから本文にある主要なポイント要素と選択肢内のポイント内容との対応を吟味して適切でない選択肢をはじいて正解を絞り込むといった氏の独自解説が特に目を惹(ひ)く。

例えば、設問にて「最も適当なものを選べ」といわれた場合、絶対に落としてはいけない、必ず押さえられなければならない並立のポイント要素AとBが2つあったとして、「この選択肢にはAとBの2つがあるけれど、この選択肢にはAのみでBの要素に言及してない欠落があるから不適切。よって選ぶべき正解の選択肢は前者」のような選択肢に対する分析の吟味が素晴らしい。またセンター試験現代文の問題作成をしている出題者も「最も適当なものを選べ」タイプの設問にて、不正解のダミーの不適切な誤選択肢を作る場合、明らかな間違いで本文とは全く異なる逆な内容(いわゆる「バツ」)、一般的で常識的な内容で正しいが問題文中には書かれていない(いわゆる「ナシ」)、極端な強調や限定の表現で内容が逸脱してしまっている(いわゆる「イイスギ」)以外にも、絶対に落とせないポイント要素AとBなどが2つかそれ以上あるのに、あえてAしか書かずBに触れない選択肢を作ることで「最も適当でない」不正解の引っかけのダミーにすること(いわゆる「カケ」)をよくやっている。

そういった間違いのある選択肢作成の仕組みを押さえた船口明のセンター現代文の解説は、出題者による問題作成視点の逆を行く、なるほど理にかなった方法であり、傍線部をポイントに分けて分析し本文から対応する要素を探し出し、それから各選択肢にてその外せない要素の有無を吟味する氏の方法は非常に優れている。

実際、大学入試センター試験の現代文の問題は大変によく考えられ大人数で時間をかけて練(ね)りに練って作成されている。センター現代文の過去問を解いていて少なくとも私は、そう思う。目立った悪問やフィーリングの記号選択で乗り切れる問題は皆無だ。どの設問にも正解の選択肢には必ず正解である確固たる根拠があり、不適切な選択肢は明らかに不正解であって、これを解答に選ぶのは無理があり間違いである根拠が必ずやある。

ところで、現代文のカリスマ(?)人気予備校講師で、かなりのベテランの方で、お名前を直接いうと失礼に当たるのであえて伏せて、昔は「驚異の現代文読解法」で売り出し、近年は「論理エンジン」の教材販売で、やたら著書や参考書を量産の連発で出しまくっている非常に商売熱心な金儲けに精を出している方がおられるが、その人の比較的新刊の参考書での「センター試験型問題の解法」にてセンター現代文の過去問解説の際、「最も適当なものを選べ」タイプ設問の選択肢の吟味が、前述のいわゆる「バツ」と「ナシ」の判断のみで処理されていて、「だから正解はこれで決まり」という明らかに手抜きな解答解説が連続した参考書があって、最近それを読んで私は非常に驚いた。いくら何でもかなりの多くの受験生が受けて社会的にも大いに注目される大学入試センター試験の国語の現代文の入試問題であるから、大人数で時間をかけて本文、選択肢ともに非常に丁寧に精密に作っているはずだ。センター試験の現代文を解く場合の選択肢の吟味で「内容に合致するものを選べ」ではなく「最も適当なものを選べ」タイプの設問の場合、「バツ」と「ナシ」の2つの判断基準のみで対応できて乗り切れて無事に正解にたどり着ける、そんなヤワな問題はさすがにない。「バツ」と「ナシ」だけの判断でセンター現代文の記号選択の全てを説明づけようとするのは、どう考えても明らかに無理がある。問題作成の大学入試センター側も当然もっと深く考えて問題を作っている。

例えば、その人気予備校講師の方の解説を読むと、「これは本文中にない内容だから、この選択肢は『ナシ』で消去できますね」といったことをサラリと書いている。しかしながら、少なくとも私が読んで問題を解いた限り、その内容部分は本文中に書いてある。確かに結果としてその選択肢は間違いで、それを選んだら不正解になるのだけれど、そう判断する基準は本文中に書いていない「ナシ」ではなくて、もっと別の判断で「この選択肢は適切ではない」と本来は処理すべきはずのものだ。私には納得できない、むしろかなり疑問が残る、そういった怪しい解説の現代文の大学受験参考書が最近、実際にあった。

だから、センター試験の現代文も船口明「きめる!センター現代文」のような非常に分析的で細かい手法の良書もあるが、その反面、何だか大ざっぱで微妙に怪しい現代文参考書があることもおそらくは事実だ。その辺り、「現代文の受験勉強の入口と出口」を間違えないように気をつけて(笑)、やったら良いのではないか。ちなみに最近の私のヘビーローテなお気に入りの歌は、昔「サザンオールスターズ」(Southern・All・Stars)の桑田佳祐が高田みづえに提供した名曲「そんなヒロシに騙(だま)されて」。