アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

大学受験参考書を読む(55)西きょうじ「ポレポレ英文読解プロセス50」

西きょうじ「ポレポレ英文読解プロセス50」(1993年)は、初版から度重なる増刷を重ね、なかなか人気な大学受験英語の参考書である。私は大学受験時に本書を使って勉強をしたことがなかったが、大学進学後に周りの人達があまりにも事ある毎に「西きょうじのポレポレは良い、やって良かった」とか言うので、後に本書を購入してやってみた。確かに「良い書籍だ」と私にも思えた。

西きょうじ「ポレポレ英文読解プロセス50」に関しては、本書を「名著で良書。受験生は必ずやっておくべき」と激賞して大推薦する良評価が大勢を占める一方、「実はそこまで良くはない。本書は過大評価されすぎ」とする冷静で否定的な醒(さ)めた意見も一部にはある。前者は西きょうじファンや「信者」をおそらく多く含み、後者には書籍の内容そのものよりも、人気予備校講師の西きょうじその人に対する反感や西きょうじ「信者」への反(アンチ)の意識から、あえて厳しく酷評する人達が、わずかだが存在すると考えられる。

西きょうじという人は、私は実際に会ったことはないが、写真を見る限りいつまでも若々しい、なかなかスマートな方で、この人がモテて人気か出るのも納得だ。もちろん、本業の予備校英語講師としての実力もある。ただ大学受験英語を教える予備校の英語の先生なのに、もはや芸能人の人気タレントのような世間から認知のされ方の扱われ様で、私は別に知りたいとも思わなかったが、西きょうじのプライベートなスキャンダル記事が週刊誌に出てしまう程の注目の人気ぶりなのである。西きょうじと同様、代々木ゼミナールの人気英語講師の西谷昇二も甘いマスクの人気と受験英語指導の確かな実力とを兼ね備えた、もはや芸能人のような有名予備校講師である。氏に関しても、前に私的な家族のことでの不名誉な記事が日刊紙に載ったことがあった。西きょうじも西谷昇二も、大学受験英語を学生に教える予備校講師の本業以外のことで変に世間から注目され、誠に気の毒な思いが私はする。

ただ西きょうじも西谷昇二も、この人たちは芸能タレントのように自身を売り出し、わざとそのように芸能人然として振る舞いたい「自分の身から出たサビ」のような自業自得の脇の甘さもかなりあって、予備校講師が受験指導科目以外でのプライベートな雑談をやったり、教壇でカラオケ流して歌ったりするような、そういう不真面目な予備校産業のレジャー化と予備校講師のタレント化は望ましくないと常々、私は思っているのだけれど。

あまり言うと熱烈な代ゼミの西谷「信者」から激しく恨(うら)まれて石でも投げつけられそうだが、特に西谷昇二に関しては、彼の講師紹介や映像講義の体験動画がネット上に公式で上がっていたりするので、それを私は時たま視聴するのだけれど、西谷昇二の受験英語を学生に教える以外での、あのタレント芸能人のような口調や振る舞いや雑談に、私としては往年の男性アイドル・田原俊彦やプロサッカー選手の三浦知良を見た時のような、いい年齢をした成熟した大人であるべきはずなのに、いつまでも10代の若者のようで幼い、自尊感情や自己肯定感とは明らかに次元が異なる、自分大好きのナルシシズムが入って「俺が、俺が」で自己完結してしまう、いつも端から見ていてこちらが勝手に心配になりハラハラしてしまう、特定芸能人に特有な人物雰囲気の、あの独特の危うい感じが(笑)。田原俊彦と三浦知良と西谷昇二を見ると、私の中ではいつも同じ種類の心配のハラハラ感がある。

さて、西きょうじ「ポレポレ英文読解プロセス50」はタイトル通りの書籍で、大学入試過去問の下線部和訳を50問収録してある。しかも構文解釈のテーマ別に、最初は長い一文における主節の「S+V」の見極めの英文読解で極めて基礎的な、しかし重要な本質的基礎を問う下線部和訳の演習から始めて、次に等位接続の共通関係や並列見切りの、これまた英文を読む上でとても大切な基礎の確認を試す下線部和訳の問題が続き、徐々に難度を上げていって、最後の設問50の近くは特殊応用事項な倒置や省略が入った大学入試過去問の難しい下線部和訳をさせる構成になっている。本書はタイトル通りの「英文読解プロセス50」なのである。過去問の下線部和訳の良問を50題厳選して、しかも段階的に「本質基礎から特殊応用へ」あらかじめよくよく精密に考えられた問題の掲載順序の配列が、まさに「英文読解プロセス50」の表題にそのまま合致しており、非常によく出来ている。事前に周到に考え抜かれた大学入試英語の下線部和訳演習の良著であると私も思う。

ただし、この参考書は中級から上級者向けの、どちらかといえば手取り足取りの「親身の指導」な英文解説書というよりはレベルアップの習熟用の良問題集である。掲載英文は冒頭のものから、そこそこ難しい。本書の解説に期待せずに、ひたすら良問に当たって自学自習できる人には評判はよいが、しっかりした英文解説(訳出の際の具体的で細かなプロセス)まで期待する、独力で下線部和訳ができない英語が苦手な初学者や初級者には「不親切な参考書」に思われて評価は低くなるのかもしれない。下線部和訳をして解説を読んでいると、「この本の読者なら、いまさら英語の基礎的なことや細かな訳出手順をクドクドと解説しなくても、もう当然のこととして分かっているだろう」的な著者の西きょうじの高踏で不遜(ふそん)な態度も時に紙面から透けて見える。やはり本書は初学者や初級者ではなく中級者か上級者向け、親切丁寧な解説よりも掲載和訳用英文の厳選センスと序列配置のアイデアが持ち味でウリの大学受験英語の参考書というか、厳密には自学自習用の良問題集なのである。

また、あえて本参考書の難点を挙げるとすれば、その書籍タイトルの最初の枕詞が…。西きょうじ「ポレポレ英文読解プロセス50」である(苦笑)。本体の「英文読解プロセス50」は既述の通り、本の内容をそのまま体現し的確にタイトル表現していて文句はないが、西きょうじもいい年齢をした大人なのに「ポレポレ」とか(笑)。なぜ本書が「ポレポレ英文読解プロセス50」なのかというと著者の西きょうじによれば、「『ポレポレ』とはスワヒリ語で『ゆっくり』という意味であり、西が前にアフリカへ行って、ゆっくりと大きく生きる野生動物をじかに目にしながら自分は何て忙(せわ)しく小さい存在なのだろうと思った、ある種の自己超越を経験し、また受験生に向けて急がず心のゆとりを持って『ゆっくり』と、しかし着実に受験勉強に取り組んでいって欲しい」の思いが込められているという。

以前に代ゼミの西谷昇二の冬季直前講習の講座でも「キャンディ・ロック」というのが(確か)あった。「ポレポレ」とか「キャンディ・ロック」とか、西きょうじも西谷昇二もこの人たちタレント予備校講師は自身の参考書や講座の名称でふざけすぎである。「もう少し真面目にやれ(怒)」と私は昔から思わないこともない。