アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(61)土屋博映「土屋の古文講義」

不思議なことに学校や職場でこういう人はだいたい一人か二人はいるものだが、なぜか自分のクラスや部署とは異なる生徒や同僚とも、いつの間にか顔見知りで親しくなっていて、登校時や出勤時に何気に遠くから観察していると、正門をくぐって玄関入口から廊下を渡って自分の教室やデスクにたどり着くまでにやたら多くの人と挨拶したり立ち話をしたりして、なかなか自分の教室やデスクの定位置にたどり着けないような。そういった異常に人好きがして誰とでも分け隔(へだ)てなく、すぐに仲良しになれる人というのが世の中にはいるものである。

代々木ゼミナールの古文講師の土屋博映は、私は氏の講義を実際に受けたことはないが、昔のメディア露出や土屋博映が執筆の大学受験参考書を読む限り、そのような「異常に人好きがして誰とでも分け隔てなく、すぐに仲良しになれる人」といった好印象である。この人は昔から都内の代ゼミで短時間で即定員の締め切り講座を続出させ、土屋の古文講義では前列の良席を求めて受験生が講義が始まるかなり前から教室前に並んで長蛇の列を作っていた、というような話も聞く。

代ゼミの土屋博映に関し特筆すべきは、この人が書店売りの大学受験参考書にて、同僚の代ゼミ在籍の講師が他社の出版社から著作を出す時、ほぼ土屋博映が著者と出版編集部との間の橋渡しの紹介や事後のフォローをしていることだ。だから代ゼミの人が代々木ライブラリー以外で新たな出版社から参考書を出す際には、巻頭の「まえがき」か巻末の「あとがき」に「今回の新刊上梓に当たり、代々木ゼミナールの土屋博映氏には大変にお世話になった。土屋先生からの紹介や助言がなければ本書が世に出ることはなかった」旨の土屋に対する謝意の文章がもれなく、だいたい付されているのである。異常に人好きがして誰とでも分け隔てなくすぐに仲良しになれる世話好きな面倒見のよさから、代々木ゼミナールの土屋博映が書店売り大学受験参考書のラインナップの充実に陰ながら貢献した偉大な功績は後々まで十分に称賛されてよい。

代々木ライブラリーから出ている「土屋の古文講義」シリーズ(1986─88年)ら土屋博映の古文参考書を読む限り、この人は講義中に雑談をやったりダジャレを連発したりすると聞いていたが、参考書紙上では古典文法も単語も読解も古文常識も文学史でもダジャレの語呂合わせなど使わず、割合に真面目で正攻法で正統派の古文講義をそつなくやる人といった好感を私は持った。