アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(77)石川晶康「日本史講義の実況中継」

語学春秋社から出ている「日本史講義の実況中継」は、昔は代々木ゼミナールらに出講していた菅野祐孝による「講義」であったが、いつの間にか菅野のものは絶版となり、後に河合塾の石川晶康の「日本史講義の実況中継」に変わっていた。

石川晶康は(確か)國學院大学の史学科出身の人で、この人は「日本史講義の実況中継」の通史の標準レベルの講義であるのに、なぜか異常に細かな、正直私にはどうでもよいと思えるマイナーレベルの史料を毎回取り上げ、いちいち読んで解説したがる(笑)。例えば原始・古代の「魏志倭人伝」中の邪馬台国の紹介記述や「高句麗好太王碑文」、近現代の「大日本帝国憲法」での主要条文や「教育勅語」など絶対に外せない基本の史料は取り上げてもよいけれど、その他、あまりに細かい、どうでもよい史料は通史の解説の流れを止めてまでいちいち掲載して読まなくてもよいのではないか。石川版の「実況中継」は、細かな史料を取り上げて読み過ぎである(と少なくとも私は思う)。

石川晶康「日本史講義の実況中継」の通史の全四巻(2000─02年)は、菅野祐孝の「実況中継」の前シリーズを引き継ぐ後継書として、原始・古代から近現代までの日本通史の流れが一読してよく分かり、しかも話し言葉の講義録でスイスイ読める非常に取り組みやすい大学受験日本史の良著といえる。

しかしその反面、どう考えても講師の石川個人の史料を読むのが好きな性癖に引きずられて、ほとんどの大学受験生は通史でここまで細かなマイナー史料をいちいち立ち止まって読む必要もないのに、「石川晶康は通史の日本史講義で史料を読み過ぎ」の苦笑いのツッコミが私は読んでいつも出る。その辺りが「日本史講義の実況中継」石川新シリーズのあえて難点と言えなくもないといったところか。

(追記─と以前に書いたところ、近年の改訂・新版の石川晶康「日本講義のの実況中継」の原始・古代から近現代までの各巻(2015年)を読んで非常に驚いた!以前の旧版よりの過剰な史料掲載・読解が減り、より内容が改善され洗練されて非常に良い日本史の大学受験参考書に変わっている。石川「日本講義のの実況中継」は間違えなく良著の名書だ!)