アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

大学受験参考書を読む(97)伊藤和夫「英語要旨大意問題演習」

英文読解の基本は、どんな英文であっても一文精読して意味が分かり訳せることが必須であるが、読むべき英文が多く長くて長文になれぱなるほど、全ての英文を順番通りに最初から最後まで全文同じ強度の厳密さで一文精読を重ねていくことは現実的ではない。

いわゆる「英語が読める人」は必ずしも全ての英文を律儀(りちぎ)に全文精読しているわけではなく、各英文の重要度に応じ濃淡や強弱を付けて立体的に長文英語を読んでいるものである。私は必ずしも「英語が読める人」ではないが(苦笑)、そんな英語達者ではない私であっても、今でも大学入試の長文英語や英語の評論レポートを読んだりする場合には、全ての英文を順番通りに最初から最後まで全文同じ強度の厳密さで一文精読を重ねていくことなどしない。各英文の重要度に応じ濃淡や強弱を付けながら、時に先の展開予測も交えて立体的に英文を読んでいる。こうしたことは英語長文のみならず、日本語でのかなり長い文章や難解な文章に対しても常にやっている。

例えば、「この部分は先の抽象的記述の具体例の繰り返しに当たるから、さすがに読み飛ばすことはないけれど(笑)、この部分は割合、力を抜いて軽く速く読む」とか、「ここの部分は後に書き手により否定される俗論の一般論にあたるので、この後に俗論の一般論とは対立する筆者の主張文が必ず来るはずだ、といった展開予測を付けながら読む」など。その他、「いくつかのタイムライン(時間経過)よりなる並列構造の長文にて、この英文は明らかに時間のフェーズ(局面)が変わる指標の重要箇所であるから、あえてそこの部分だけ繰り返し読んで強く記憶したり、時に書き入れの印を付けておく」とかである。

繰り返しになるが、読むべき英文が多く長くて長文になれぱなるほど、全ての英文を順番通りに最初から最後まで全文同じ強度の厳密さで一文精読を重ねていくことは現実的ではなく、これら各英文の重要度に応じ濃淡や強弱を付けて、時に先の展開予測も交えて立体的に英文を読んでいく機転の読みが必要となる。

大学入試の英文読解では、いくら一文精読は出来ても問題英文が長文で長くなれぱなるはど全体の意味が分からず、読んでいて既読の内容が整理できず、また先の内容予測も全くできないとか、長文英語を最後まで読んだけれども全体の大意や要旨が明確に把握できない、そのため記述式の大意要約問題や、全体に渡る細かな内容に関する記号式の正誤判別の内容一致問題に対応できないといった声が昔からある。

例えば、駿台予備学校の英語科の伊藤和夫の著書に「英文解釈教室」(1977年)の一文精読の厳密な英文解釈のものがある一方、また同じく伊藤和夫「英語要旨大意問題演習」(1987年)のような、昔の東京大学や慶應義塾大学で出題されていた長文英語の大意把握の要約記述問題対策の書籍があるのは以上のような事情があるからだと思われる。

英語要旨大意の把握のための方法としては、パラグラフリーディングないしはディスコースマーカーを指標とする英語長文の読み方教授が有効である。

「パラグラフリーディング」とは、各段落ごとに要点を把握し、一貫して連続し絶えず話題になっている主題となるキーセンテンスやトピック語を押さえて、同時に先の文内容も予測しながらマクロの視点で英語長文を読み進めていくこと。また「ディスコースマーカー」とは、文脈の流れや構造、文と文との論理関係を示す単語や句のことであり(例えば「for・example 」の具体化を示すマーカー、「not・A・but・B」の対立を表すマーカー、「in・short」「therefore 」の要約・まとめのマーカー、「must」「have・to」の主張文のマーカーなど)、そうした目印(マーカー)となる語に注意しながら英語長文を読んでいく方法を指す。