アメジローのつれづれ(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。

大学受験参考書を読む(83)荻野文子「マドンナ古文」

予備校講師が大学受験の勉強を教える以外の所で、講義中に面白おかしい脱線の雑談を長々とやったり、自身の趣味や経歴、家族のことや同僚予備校講師との仲の良い付き合い、はたまたライバル講師との関係対立の確執ら個人の私的なこと、その他、予備校業界の裏側などを語って生徒の関心を引き一躍カリスマ人気講師になるような、「いかにも」な予備校文化のノリを私は昔から敬遠してきた。正直、苦手だったのである。大学受験勉強の内容以外のもので、教える側の予備校講師の人柄とか講師個人の私的な事はどうでもよくて私には全く関心興味がなかったので。

だから、昔から案外に根強くある「××先生」のようなキャラクター付けのあの予備校文化のノリも、私は正直どうかと思っていた。外見の服装や容姿、内的な個人の趣味や予備校講師になる以前の特異な経歴・キャリアなどからキャラクター作りをして、一躍人気になる予備校の講師はいつの時代にもいる。例えば、元代々木ゼミナールの英語の佐藤忠志の「金ピカ先生」(高級スーツと金色の高級時計をこれみよがしに身に着けている)、元代々木ゼミナールと元東進ハイスクールの古文の吉野敬介の「ヤンキー先生」(暴走族の不良から一念発起して大学進学し予備校講師になった異色の経歴の持ち主で、今でもリーゼントヘア)など。その他にも名前は知らないが、日本史か世界史かの予備校講師で、授業のたびにその時に教える時代に合わせて毎回コスプレしてくる人もいたような気がする。

そして今回取り上げるのは、以前に代々木ゼミナールと東進ハイスクールに出講していた古文の「マドンナ先生」こと萩野文子である。

荻野文子の著書には「マドンナ古文」(2013年)、「マドンナ先生・古典を語る」(2001年)らがある。女性教師で「マドンナ先生」といえば、学園一の美人で気立てがよく才女で優しくて、同僚男性教師や多くの男子学生から憧れられていて、しかし「マドンナ」と称される当人はそのことに全く気付いていない純情で、お人好しの好人物のような。古い例えで申し訳ないが(笑)、昔のテレビの学園青春ドラマで言えば、村野武範主演の「飛び出せ!青春」(1965年)での酒井和歌子とか、中村雅俊主演の「ゆうひが丘の総理大臣」(1978年)での由美かおる、あと田原俊彦主演の「教師びんびん物語」(1988年)での紺野美沙子が「マドンナ先生」として私には思い浮かぶ。とにかく、女性の教師で「マドンナ先生」とか「学園のマドンナ」といえば、美人で気立てがよく才女で優しくて皆に憧れられていて、しかし「マドンナ」と称される当人はそのことに気付いていない好人物な所が肝(きも)である。

荻野文子「マドンナ古文」「マドンナ先生・古典を語る」←自分から自身のことを堂々と「マドンナ」って自称で言うな(怒)。

荻野文子「マドンナ古文」は、昔からある大学受験の古文の参考書でこれまでに何度も重版・改訂されている人気の書籍である。本書を読むと、各章の最初のページや中途に「荻野先生の授業ライブ」なる特設ページもあって、そこで「マドンナ先生」こと荻野文子の授業中の横顔ら他角度からの多ショットやズームのアップら、正面からのカメラ目線の正式写真ではない、授業中の盗撮っぽい(?)オフショット写真がやたら数多く掲載されていて昔から笑う。まぁ確かに荻野文子は美人だとは思うけれど、わざわざ自分から自身のこと「マドンナ」って堂々と言うな。

荻野文子「マドンナ古文」には古典文法を中心とした読解に加えて、古文単語や古文常識らの別冊もある。本シリーズは古文を初学の現役高校生から古文が苦手な受験生まで、初級から中級クラスの受験生におおむね好評なようである。

ただ問題として、古文の解説が縦書きではなくて横書きなのがな(苦笑)。国語の古文・漢文で横書きはいけない。必ず絶対に縦書きでなければならない。私は、かの「マドンナ先生」の(←笑)、授業を実際に受けたことはないが、参考書紙上での「荻野先生の授業ライブ」の写真にある背景の板書を見ると普段の古文講義でも横書きであるようだ。この人は参考書だけでなく日頃の授業から古文を横書きで普通に書いている。私大の短文記述や国公立二次の長文記述にて解答欄にマス目や罫線がなく、ただ四角で囲まれた指定の欄がある場合、縦書きではなく横書きで書いたら間違いなく減点されるだろう。あえてそこが荻野文子「マドンナ古文」の難点であり弱点か。