アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(46)山本充男「世界一わかりやすい京大の日本史 合格講座」

京都大学の二次試験の日本史は、論述(200字以内の論述)と用語記述(空欄補充、一問一答)の2種の問題よりなる。当然、最初に解くべきは用語記述の方であって、これを最初に出来るだけ短時間で早く済ませて、より多くの残り時間を論述に傾注する時間配分が京大日本史攻略のカギとなるに違いない。

京大日本史の過去問にて、空欄補充や一問一答の用語記述問題を連続して解いていて私が気付くのは、用語記述で受験生に書かせたい日本史用語の解答が最初にあって、つまりは解答をまず決めておいて、そこから逆算しその用語が解答になるような下線部の問いや空欄ありの史料を考えたり探すの順序で、大学側は問題作成しているのではないかということだ。京大の日本史の用語記述の問題を年度ごとに解いていると、解答となる日本史用語の選択が毎年、絶妙なのである。山川出版社「日本史用語集」の「頻度3」(十何社ある教科書のうち3社の教科書に書いてある用語。あまりに定番で易しくないが、逆にそこまで高度で細かくもない、適度にそこそこ難しい知識)から「頻度6」まで辺りの用語がほぼ解答になっている。例えば「碧玉製腕飾り(頻度6)」「西大寺(頻度3)」「火除地(頻度5)」など。受験生の誰もが答えて書ける余りにも易しい「頻度10」ではなく、また非常に細かい明らかに高校生レベルを超えた難しい「頻度1」でもない。おそらく京大の関係者は、山川の「日本史用語集」を参照して「頻出3」から「頻出6」くらいの範囲の用語をあらかじめ選択し、そこから逆算して問題作成しているのではないか。

何しろ日本史の用語記述問題は、記号選択式のそれとは違って用語を漢字で正確に書かないと点数はもらえない。漢字の間違いがあれば失点となるし、漢字が分からずあえてひらがなで書くと、かなりの減点になる。だから常日頃から日本史用語を実際に繰り返し書いて覚えるようにした方がよい。特に京大の日本史に関しては、その際に山川の「日本史用語集」を主に使って「頻出3」から「頻出6」くらいまでの用語に集中的に当たりをつけ、内容理解につとめて正確に漢字で書ける勉強を重ねていくとよい。

そういえば、これは京大日本史には関係ないが、昔に立命館大学の日本史で近代の自由民権運動時の「讒謗律(ざんぼうりつ)」を漢字で書かせる問題があって当時、話題になった。これは漢字記述を要求している時点で確かに難問である。「讒謗律」とか普通の大学受験生でもなかなか正確に漢字で書けない。少なくとも私は「讒謗律」を間違えずに書ける自信はない(笑)。

他方、京大日本史の論述はシンプルである。問題文が1行か2行で終わる。付属の史料や図表はない。だいたい「××について具体的に述べよ」か「××を簡潔に説明せよ」の問いになっている。論述の制限字数は200字である。

例えば東京大学の日本史論述は長いリード文や多くの史料・図表を付して、非常に細かく練(ね)りに練って事前に相当に考えて作問しているのに、他方で京都大学は実にシンプルであっさりとしている。東大とは対照的に、京大は即席で問題作成したように時に思えて何だか笑う。京大の論述は大学入試の日本史論述の基本の型であるので対策が容易であるし、実際に書きやすく試験そのものに取り組みやすい。

ただ京大型のシンプルな論述では、そのまま漠然と書き出してしまわないことが肝要である。「××について具体的に述べよ」「××を簡潔に説明せよ」と極めて大まかに聞かれた場合、まず解答にて書くべき項目の内容分けをして、次に各ブロックごとに複数の部分を積み重ねるようにして書く。例えば「国内と国外」「中央と地方」「政治と経済と文化」や、「(複数ある)時間の変化・推移の段階」「他の事柄との共通と相違」「継承面と革新点」「プラスの面とマイナスの面」など、各ブロックに分けて論述するのが基本である。

最後に、山本充男「世界一わかりやすい京大の日本史・合格講座」(2015年)について。京大の日本史過去問の参考書は、近年では教学社の「難関校過去問シリーズ」にて「京大の日本史・20カ年」が出ているけれど、昔は教学社に「東大の日本史」はあっても、まだ「京大の日本史」は長い間なかったのである。そのため京都大学の日本史の過去問を確認したり問題を解くのに、「KADOKAWA(角川書店)」から出ていた山本充男「世界一わかりやすい京大の日本史・合格講座」を以前に私は使っていた。本参考書は解説と論述の模範解答ともに適切であると思う。ただタイトルの「世界一わかりやすい京大の日本史・合格講座」というのがな(苦笑)。著者も出版社も本書の内容にかなりの自信があるのかもしれないが、「本当に『世界一わかりやすい』のか!?『 世界一』など大げさ過ぎて、そんな簡単に『世界中で一番』の最上級を使っていいの !? 」の本書に対する少し悪意のある疑問を、私は抑(おさ)えきれない。