アメジローのつれづれ(集成)

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大学受験参考書を読む(91)浦貴邑「現代文記述問題の解き方 『二つの図式』と『四つの定理』」  

大学受験現代文の記述式問題では、「何となくの漠然で書き出すな。必ず最初から記述解答のプランを持ち、書くべきことを確信を持ってから書き出せ」などの指導がよくなされる。河合塾講師による河合出版から出ている、浦貴邑・中崎学「現代文記述問題の解き方『二つの図式』と『四つの定理』」(2017年)は、そういったただ何となくの漠然で書き出さない現代文の記述式問題対策の優れた大学受験参考書である。

本書「現代文記述問題の解き方 『二つの図式』と『四つの定理』」のタイトルには、「記述の手順がわかって書ける!」の文句もある。「二つの図式」とか「四つの定理」など割合に細かく公式化して、それらがシステマティックにまとめられ、その図式と定理のシステムに従い順序立てて「記述の手順」作業を進めていけば、誰でも現代文の記述問題にて適切な解答記述の文章が作成できるの趣旨である。

本書は二部構成で最初の30ページほどで、かの「二つの図式」と「四つの定理」を柱とする記述解答作成の原理的な手順を「公理・定理・細則」に分けて方法論の概要としてまとめる、その上で次に残りのページで実践問題演習をやりがら、その「二つの図式」や「四つの定理」を実際に使ってみるの内容である。「二つの図式」と「四つの定理」の記述解答作成の原理的な手順は、本書の表紙カバー裏に一つの「公理」と四つの「定理」と三つの「細則」の「8つのルール」として、まとめて掲載されている。本参考書を購入するかどうか迷っている人は一度、表紙カバー裏を参照して参考にするとよい。

特に「二つの図式」に関しては、内容説明(「…とはどういうことか」)と、理由説明(「…というのはなぜか」)の問題形式にあえて絞り、その記述解答の方法を集中的に指導している。前者の「内容説明」については、問題傍線部を最初にいくつかの「説明要素」のブロックに分割して、傍線中にある指示語、抽象語、比喩表現らを一つ一つ丁寧に言い換えたり、新たに言葉を補って説明しなおす、すると結果「…とはどういうことか」の内容説明の設問要求に適切に答えた記述解答ができるという仕組みである。

後者の「理由説明」に関しては、問題傍線部の内容を因果の論理に引っ掛けて、本文全体の要約論旨や別の参照部分からの引用、また必ずしも問題文に明確に書かれてはいないが設問の問い方などから類推できる、因果関係(原因と結果の論理的つながり)における原因・背景(「…だから」「…であるため」)の内容を適切に補い、まず記述地点の「スタート」を決めて「論理的階段」で因果の論理をつなぎ順次書き入れて結果、「…というのはなぜか」の理由説明の設問要求に明確に答えた記述解答になるというわけである。

これら「内容説明」と「理由説明」の記述問題への書き方メソッドは割合、オーソドックスな普通によくやられている記述解答作成の方法である。私が知る所では、これと同じ記述解答指導を詳しくやっている現代文の大学受験参考書に今井健仁「現代文の解法・東京大学への道」(2009年)がある。

本書は現代文の記述式問題の解答文作成の順序的な具体的手順をシステマティックに「二つの図式」と「四つの定理」を通して示しており、その方法順序に従って解答文作成をしていけば、着実に「記述の手順がわかって書ける!」の目標に到達できる全般に大学受験現代文の優れた参考書といえる。ただ難点は傍線部の「内容説明」と「理由説明」のみを扱った内容であり、私が見るところ、大学入試の現代文記述には他の問いかけパターンや内容説明と理由説明以外の思考を使う問題(対立発想とか語句・意味のズラしとか解答記述文章の基本の型のあらかじめの設定など)、その他のものも数多くある。本参考書だけでは入試現代文の記述問題すべてに対応できるわけではないというのが、あえて言えば本書の難点か。